図4で、回路シミュレーション結果と実際の観測波形を比較します。ここでは、実際の観測波形の画像を回路シミュレーションの時間軸に合わせるように伸ばしてあります。
突入電流のピーク値(実測値)は1.32A、回路シミュレーションの結果は1.33Aなので、ほぼ一致しています。また、ピークに達する時間は、実測値では電源投入後から約2.5マイクロ秒、回路シミュレーションでは1.02マイクロ秒後です。完全に一致はしませんが、あくまで等価回路でのシミュレーションなので、妥当な値だと考えられます。電流の減少傾向も、完全に一致はしませんが、ほぼ同じだと考えられます。
このように、回路シミュレーターを使うと、突入電流のピーク値とピークになるタイミング、減衰の傾向を簡単にかつ正確に知ることができます。
回路シミュレーションを用いて、突入電流の対策を検討してみます。
「Q&Aで学ぶマイコン講座(31)マイコン周辺回路設計テクニック――電源編」の「突入電流 対策2」でインダクタンスを挿入した場合を紹介しました。その時挿入したインダンクタンスは250μHだったので、図3(c)のシミュレーション回路で、Lの80nHに250μHを加えた250.08μHにして回路シミュレーションを行います。
回路シミュレーションの結果を図5(a)に、実際の観測波形を図5(b)に示します。ここでも、実際の観測波形の画像を回路シミュレーションの時間軸に合わせるように伸ばしてあります。
実際の観測波形の突入電流のピーク値は460mAです。一方、回路シミュレーションでは450mAなので、ほぼ一致します。また、ピークのタイミングは、実際の波形と回路シミュレーション結果で若干違いがありますが、あくまで等価回路でのシミュレーションなので、妥当な値だと考えられます。
回路シミュレーションだと、回路定数は簡単にかつ自由に変更できるため、対策の検討も簡単です。今回は250μHの場合ですが、これを増やしたり、逆に小さくしたりすることも簡単にできます。
このように、実際のボードを作る前に、回路シミュレーターで突入電流のピーク値とタイミングおよび、電流の減少傾向を可視化し、さらに対策案を検討することができます。⇒Q&Aで学ぶマイコン講座:過去の質問一覧はこちら
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