今回はアバランシェ耐量を使う時のマージンの取り方やアバランシェ保証導入初期にメーカーとともに経験した失敗事例について説明します。ここで紹介する失敗事例は現在では全て対策が取られ、同じ不良は発生しないはずです。
前回はアバランシェ耐量に対応したMOSFETのチップがどのような特性を持つのかを中心に説明しました。
今回はアバランシェ耐量を使う時のマージンの取り方やアバランシェ保証導入初期にメーカーとともに経験した失敗事例について説明します。ここで紹介する失敗事例は現在では全て対策が取られ、同じ不良は発生しないはずです。
一般的なアバランシェ耐量の試験条件は次の4点で決められています。
アバランシェの破壊モードは前回説明したように2つのモードがあります。したがってディレーティングも2つのモードを考慮しなければなりません。
①(電流一定モード)
破壊を左右する因子はピーク電流です。保証条件はTch=Tch(MAX) でI=Id(dc)ですからチャネル温度と電流に対してディレーティングを取ります。
②(熱破壊モード)
破壊はサージエネルギー、つまりチャネル温度に左右されますのでチャネル温度に対してディレーティングを取ります。
【ディレーティング基準】
2つの条件に共通するチャネル温度は図1の実波形のVAV、Idp、パルス幅Twと過渡熱抵抗曲線から1式を使ってチャネル温度上昇ΔTchを算出できます。あるいは既に回路の浮遊インダクタンスLeやVAV、Idpなどが分かっている場合はバルス幅を2式で求め、1式から温度ディレーティングを決めることができます。
(計算例)
以下、かつ
これらの温度は独立に決まるものではなく放熱設計を通じて両者は表裏一体の関係にあります。通常はTch=Tc+(5〜10℃)程度ですからTcを優先して熱設計を行います。
定常状態のTchに1式のΔTchを加えた値が先ほどの120℃以下に入るのか否かを判断します。
ただし実際に計算をしてみれば分かるのですがスイッチング電源の場合、アバランシェによる温度変動ΔTchは(Tch−Ta)の数%以下ですから本来の熱設計に余裕があれば測定精度や計算精度は通常では問題になりません。
アバランシェ耐量は破壊特性です。したがって保証値を超えるとチップにダメージが残りますので基本的なディレーティングは最悪状態で80%を超えないように設定します(測定誤差10%、マージン10%)。
また、信頼性を重視する場合にはピーク電流を60%に設定する例も多いようです。
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