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D-Aコンバーターの仕組みと使い方Q&Aで学ぶマイコン講座(85)(2/4 ページ)

» 2023年10月05日 10時00分 公開

DACの方式

 Q&Aで学ぶマイコン講座(8)「マイコンでサイン波、コサイン波を作れますか?」では、直列抵抗方式(図2(a))について解説しましたが、単純に抵抗を直列に接続すると、10ビット分解能で1023個、12ビット分解能で4095個、16ビットになると65535個の抵抗が必要になります。しかし、これだけ多くの抵抗とスイッチのMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ、Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)をシリコン上に、それも抵抗値がばらつかないように製造することは不可能に近く、現実的ではありません。そこで、高分解能のDACではR-2R方式が多く使われています。

図2:DACの電圧生成方式 図2:DACの電圧生成方式[クリックで拡大]

コラム1

 筆者がマイコンの設計者時代の経験談ですが、直列抵抗方式が実際に使えるのは8ビット分解能までで、10ビット分解能以上で直列抵抗方式を使う場合には、さまざまな工夫を施して精度を出していました。直列抵抗とスイッチMOSFETの抵抗値だけでなく、それらを接続するメタル層の導通抵抗にも影響を受けるので、メタル層の配線パターンが特許になるほどでした。インターネットなどで、メタル層の抵抗値を0Ωで計算している場合を見たことがありますが、実際の製品では0Ωになることはありません。微細化が進んだ近年では、メタル層の幅も細くなっているのでなおさらです。

 これらの抵抗値は、シミュレーションではある程度誤差を考慮して計算されますが、実際のばらつきは試作してみないと分かりかりません。また、製造ライン間でもばらつきが発生するので、製造ラインでの打ち込みイオン量の制御も大変だった記憶があります。

 図2(b)に、R-2R方式、4ビット分解能の場合を示します。

 RΩの抵抗と2RΩの抵抗を1対にして構成されていて、基本的にnビット分解能の場合はn対のR-2Rで構成可能です。ただし、一番グランド電位に近い抵抗は2R-2Rの対になります。

 例えば10ビット分解能で10対、12ビット分解能で12対、16ビット分解能で16対です。さらに便利なことに、出力値レジスタの各ビットが切り替えスイッチに対応するので、スイッチの数もn個で済みます。

 R-2R方式の場合、基準電圧を2のn乗で分割した電圧を1ステップ(刻み)として、出力電圧をユーザーがレジスタを使って設定します。

 例えば、12ビット分解能で基準電圧が1.0Vの場合、出力電圧の1ステップは、1.0V÷4096(2の12乗)=0.00024414Vになります。この時、出力電圧を決めるレジスタは12ビットになります。

 R-2R方式の出力電圧は、直列抵抗方式と異なり、出力値レジスタを最大値にしても基準電圧のフルスケール値は出力されません。基準電圧の「(出力値レジスタ値)/(2n」の比率になるため、出力値レジスタが最大値の場合は、基準電圧よりも1ステップ分小さい電圧が出力されます。12ビット分解能の場合は、(1)式で示したように、出力電圧は次の計算式で求められます。

DAC出力電圧=基準電圧×(DOR/212)=基準電圧×(DOR/4096)

 例えば、基準電圧が1.0Vで12ビット分解能の場合の出力値は次のようになります。

出力値レジスタが2進数の[000000000000]なら1.0V×(0/4096)=0V

出力値レジスタが2進数の[100000000000]なら1.0V×(2048/4096)=0.5V

出力値レジスタが2進数の[111111111111]なら1.0V×(4095/4096)=0.99975586V(最大値)

コラム2

 一般的に、マイコンに搭載されているDACの方式が直列抵抗方式かR-2R方式かは、マニュアルなどに記載されていません。しかし、必ず出力電圧の式が示されているので、その式を見て、分母が2n-1か2nかで直列抵抗方式かR-2R方式かを判断できます。R-2Rの場合、基準電圧のフルスケールが出力できないので注意が必要です。

 また、抵抗の代わりにコンデンサーで分圧している場合もあるため、その場合はマニュアルやデータシートなどをよく読んで、説明に従って使用してください。

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