電磁気学入門講座。今回は、疑似共振フライバックモードのトランス設計について解説します。
標準的なフライバックトポロジーの一般的なバリエーションとして、疑似共振スイッチングが使われます。一次側のスイッチは出力が不連続(DCM)になるまでオン状態を維持し、トランスに残留しているエネルギーは、一次側インダクタンスと寄生静電容量間の相互作用により共振(リンギング)を起こし始めます。
しかしながら、すぐに共振波形の最初の谷に到達し、一次側のスイッチはオフし、共振は制御され最初の谷の後に停止します。
これは、巻き線比がフライバック電圧波形を決定するトランス設計に帰結します。フライバック電圧が入力電圧と等しい場合は、最初の谷でゼロ電圧スイッチング条件が発生し、スイッチング損失は極わずかです。理想的には、巻き線比は最小入力電圧と同じか、わずかに低いフライバック電圧を生成する値である必要があります。
負荷に依存するスイッチオフ時間toffによって、QRトポロジーは動作周波数を変更します。また、多くのQRコントローラーは、効率向上のために一次側ピーク電流の調整も行います。
連載第53回「電磁気学入門(10)フライバックトランスの設計」で示した一次巻き線インダクタンスの計算式で与えられる、単に出力インダクタンスと巻き線比をもとにした単純な一次側インダクタンスとの関係は、すでに実際通りの可変周波数条件を保持しておらず、一次側インダクタンスの計算は非常に複雑です。
一次側インダクタンスが低すぎる場合、この電源は、広すぎる負荷範囲と効率が低下するDCM動作になります。インダクタンスが高すぎる場合は、スイッチング周波数がQRコントローラーICの最小値を下回り、早期にパルススキップモードに入ります。理想的な一次側インダクタンスは、この計算値と同じか10%前後低い値です。
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