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MCUの「礎」的存在、Microchip「PIC16」マイクロプロセッサ懐古録(3)(3/4 ページ)

» 2025年04月22日 13時30分 公開
[大原雄介EDN Japan]

Sanghi氏の先見の明

 図4はSanghi氏の2009年のプレゼンテーションであるが、EPROMを組み合わせる事で、Mask ROMの製造や検証に伴う期間を大幅に短縮できた。UVEPROMにしてもEEPROMにしても、開発中は何度でも消去して書き直しを行えるし、一度開発が完了したらあとは書き込むだけ(UVEPROM版では、ガラス窓のない安価なOTPパッケージを利用できたし、EEPROMではプログラム書き込み時に再書き込み可能なヒューズを飛ばすだけでよかった)だった事で、開発から量産までの時間を大幅に節約できたことが、この躍進に繋がっている。前回の記事「今なお現役、1000種以上が存在するIntel空前の長寿MCU「8051」」紹介した「Intel 8051」にしても、その元になったIntel 8048ではまずEPROM版のIntel 8748の開発を行ったというあたりが、MCUにおけるMask ROMの書き込みがいかに障害になっていたかを示している。

図4:ESC(Embedded System Conference)Silicon Valley 2009におけるSanghi氏の"The Embedded Processing Iceberg: Limitless Innovation Opportunities"とい基調講演でのスライド。下の方が切れているのはご容赦を[クリックで拡大]

 余談だが、同社はこれに続き1999年にはフラッシュメモリを搭載した「PIC16F84」を発表している。これに関してSanghi氏は先ほどのスライドに続く形で、フラッシュメモリの登場でMCUがField Re-Programmableになり、(なぜか)Product Definitionの期間短縮が可能になり(図5)、さらにソフトウェアのアップデートで機能が向上する(図6)といった話も紹介している。図5はともかくとして、図6に示すような話を2009年に論じていた辺りはSanghi氏の先見の明を示す例の一つとしても良いかもしれない。

図5:UV-EPROMはともかくEEPROMについては、ちょっと後になると消去/書き込みのための回路がMCUに搭載されるようになったが、この当時はいちいち筐体を開けてチップを取り出して書き込んで戻すという作業が必要だったから、客先で更新というのは非現実的だった。ところがFlashになるとFlash Writerのプローブを繋いで更新できるので、まだ現実味があったのは事実だが、だからといってProduct Definitionの期間が短くなるというのは理解しにくい[クリックで拡大]
図6:こちらはOTA Updateという形で最近やっと現実的になってきている[クリックで拡大]

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