今回は、1975年にAMDが開発した「Am2900」シリーズを紹介する。ビットスライス方式の同シリーズを採用して多くのミニコンが構築されたが、NMOS/CMOS化やプロセス微細化により、1980年代にはマーケットがほぼ消えていった。
AMDといえば、Intelに次ぐx86プロセッサを供給しているベンダーであり、特に昨今ではサーバやデスクトップのマーケットで大きく躍進。売上高や出荷数そのもので言えばまだIntelと差があるが、営業利益や株式の時価総額ではIntelを凌ぐというところまで来ている。実を言えばIntelもAMDも、もともとはFairchild Semiconductorがルーツだったりする(ただし分社化したとかではなく、どちらも創業者がFairchildを退社して創業というパターン)こともあって、ある意味似ているとはいえる。
AMDとIntelの大きな違いは、AMDはSecond Sourceを含む広範なIC/LSIの製造販売を行ったのに対し、IntelはFirst Sourceにこだわったあたりだろうか? 実際、IntelがSecond Source契約を結んで出荷した製品は全然思い付かない。対してAMDはもうさまざまな製品を売り出した。x86だけでなく、Zilogの「Z8000」もやはりSecond Source契約を結んで発売したりしている。あと、ちょっと黒歴史めいているのが「AM9080」である。これは「Intel 8080」をリバースエンジニアリングして開発された互換CPUで、当初はライセンス無しで販売されていた(のちにIntelとの間でライセンス契約が結ばれたが)。
ただAMDはこうしたSecond Source製品だけでなく、自社開発の製品もいろいろあった。その最初のものが1970年に発売された「Am2501」(図1)である。これに続き、Second Source品に加えて自社製品もどんどん追加されるようになってきた。ただこれらはいずれも汎用品であるが、1975年に同社は初のMicroprocessor「の元」を発表する。それが「Am2900」シリーズである。
今回いろいろ、なぜAMDがこのAm2900シリーズを企画したのかを調べたのだがついに資料が見つからなかった。実を言えばAm2900が発表された1975年というのはAMDがIntelと「8085」のライセンス契約を結んだ年でもあり、それもあって歴史とかを調べてもこのIntelとのライセンスの話ばかりである。ただ1978年のAm2900 Family Data Bookの冒頭にはこんな記述(図2)があり、Am9080Aの事を意識しつつも、全く別のものを生み出そうとしていたことが分かる。という事で前置きが長くなったが、今回のテーマはAm2900シリーズである。
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