表2にSTM32U0の消費電流値を示します。この表の値はおおよその値です。詳細の数値はデータシート(外部リンク)を参照してください。もっと細かく記載されています。
RUNモードとSLEEPモードの電流値の単位は、周波数当たりの数字です。高速処理をするほど、電流値は大きくなります。言い換えると、演算速度と消費電力はトレードオフです。必要以上に演算速度を上げると、無駄な電力を消費することになります。演算速度と消費電流の最適化を図りましょう。
動作機能を無視し、電流値だけに着目した場合、最も電流値が小さいのはSHUTDOWNモードで、16nAになります。ただし、復帰機能以外の全ての機能が停止します。外部で電源スイッチをオフして待機すれば電流値を0Aに抑えられますが、起動時間が電源立ち上がりからリセット解除まで数百マイクロ秒から数ミリ秒かかります。従って、電源スイッチオフの代わりにSHUTDOWNモードを使うと、最小電力に抑えられて、復帰時間も約300マイクロ秒ですみます。
しかし、SHUTDOWNモードは、他の低消費電力モードと比べると、動作機能に制限があり、復帰時間が長くなります。
復帰時間が長いと、その期間に流れる電流は無駄な電流になります。電流値を究極まで抑えたい場合はネックになります。図1に復帰時間が長い場合と短い場合の消費電流量のイメージを示します。
低消費電力モードとRUNモードを繰り返すアプリケーションの場合、復帰時間に無駄な電流が発生します。図1(a)よりも(b)の方が、総電流量が少なくなり、低消費電力になることが明確です。モード遷移を頻繁に繰り返す場合などは、総電流量に影響を与えるので、復帰時間を極力短くしなければなりません。
超低消費電力が求められるアプリケーションの1つにガスのスマートメーターがあります。ガススマートメーターは、常にガスの流量を測っているのではなく、一定周期で測定する動作パターンになっています。ガスの流量を測定し終わると低消費電力モードに入り待機します。そして、次の測定タイミングでRUNモードに復帰し、測定を行います。まさに、図1の電流消費パターンが繰り返されます。
一方、ガススマートメーターは、搭載した電池のみでメーターの有効期間の10年間の長期可動が必要です。すなわち、超低消費電力が必要とされます。そのため、復帰時間の無駄な消費電流も極力抑えなければなりません。これらの必要条件から考えると、SHUTDOWNモードでは、復帰時間が長く、かつ一定周期を測定するRTCも動作しませんので対応できません。そこで、STANDBYモードで、RTCを動作させるか、STOP2モードでRTCを動作させるかのどちらかになります。
STANDBYモードで、RTCを動作させた場合は電流値が230nA、復帰時間が約65マイクロ秒で、STOP2モードでRTCを動作させると、電流値が630nA、復帰時間が約7マイクロ秒です。電流値と復帰時間のどちらを優先するかは、開発者が実際の遷移周期と総電流量を計算または実測して、判断する必要があります。
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