マイコンユーザーのさまざまな疑問に対し、マイコンメーカーのエンジニアがお答えしていく本連載。今回は、中級者の方からよく質問される「低消費電力モードの使い分け」についてです。
素朴な疑問から技術トラブルなどマイコンユーザーのあらゆる悩みに対し、マイコンメーカーのエンジニアが回答していく連載「Q&Aで学ぶマイコン講座」。
今回は、中級者から多く寄せられる質問です。
連載第23回「消費電力の計算方法」、第28回「いろいろなマイコンの低消費電力モードを理解する」、第101回「マイコンの消費電力を低減するには?」の応用編です。
マイコンの低消費電力モードにはいろいろありますが、具体的にどのように使い分ければ良いのでしょうか?
例えば、STマイクロエレクトロニクス(以下、ST)の汎用32ビットマイコンSTM32U0シリーズ*1)には、STOPモードやSTANDBYモードがありますが、実際のアプリケーションで、どのように使い分ければ良いのでしょうか?
*1)STM32U0
まずは、各低消費電力モードの違いを明確にしましょう。例えば、CPUは動作するか? 周辺機能の動作は動作可能か、可能ならば高速か、低速か? RAMのアクセスは可能か、データは保持されるか? 時計機能は動作しているか? などです。
そこで、STM32U0を例にして、各低消費電力の違いをまとめました(表1)
この表では、周辺機能の中でも時計機能のRTC*2)に着目したかったので、LCD機能とあわせて別枠にしました。
低消費電力モードを使い分けるポイントは次の4つです。
一般的なアプリケーションでも、演算速度よりも電流値を優先して、低速RUNモードや低速SLEEPモードを使う方が電力の節約になります。
電池駆動のアプリケーションなどで、とことん電流値を小さくして電池寿命を長くしたい場合は「演算速度」や「機能」よりも「電流値」を優先します。また、待機時にカレンダーと時計を表示させたい時や、秒単位のタイムベースでマイコンを動作させたい時は、「RTC」が必須です。
時間表示が必要であればLCD機能が動作できるモードを選択します。また、低消費電力モードから通常モードに復帰する時に消費される電力は、無駄な電力です。これを低減したい場合は、「復帰時間」を短くしなければなりません。さらに、低消費電力モード時に、演算途中のデータなどを保持したい場合は「RAMのデータ保持」が重要なポイントになります。
低消費電力モードで使用する機能で星取表を作って、各ポイントをチェックしながら、具体的に低消費電力モードを選択すると効率的です。
*2)Q&Aで学ぶマイコン講座(84)「RTC(Real Time Clock)の機能と使い方」
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