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ファミコンにも採用された「MOS 6502」、その末路をたどるマイクロプロセッサ懐古録(6)(2/4 ページ)

» 2025年07月30日 12時00分 公開
[大原雄介EDN Japan]

MC6800の「廉価版」を目指したMOS 6501

 MOS 6501はそんな訳でMC6800の機能縮小版というか、廉価版を目指した構成である。実際大きなレベルでのブロック図(図1、図2)を比較すると、差が分からない。

図1:出所:MC6800のデータシートより 図1:出所:MC6800のデータシートより
図2:出所:MOS 6500のデータシートより 図2:出所:MOS 6500のデータシートより。回転させたり、描き方をちょっと変えたりしているが、基本的には同じアーキテクチャだと分かる

 具体的な違いとして外部から分かるものとしては

  • Address BusからTri-state Driverを削除。MC6800はAddress BusがHigh/Low/High-Zの3状態をサポートしていた。High-ZはDMA転送時にアドレスバス開放のために必要となるが、これは外部チップに任せることにして、CPU内のバスドライバを簡素化した
  • Accumulatorを1つ減らした(MC6800のAccumulator Bが省かれた)
  • Stack Pointerを16bit→8bitに減らした。このため、MC6800のStack Pointer Hにあたるものが無くなった
  • MC6800の16bit Index Register(IX)が、2つの8bit Index Register(X/Y)に変更された。これに伴いアクセス方法も拡張された(XはIndexed Indirect、YはIndirect Indexedでのアドレス指定が可能になった)。
  • 命令数がMC6800の72から56に削減された(ただし初期のロットはROR(Rotate Right)命令がサポートされておらず、55命令だった)。

などが挙げられる。加えてMC6800よりも内部構造の最適化とか簡略化が図られた。このあたりは同じ設計チームが携わったからこそ、という面はあるかと思う。ちなみに命令を減らしたり、レジスタを変更したり、Offsetを8bitにしたりしたことで、MC6800との命令互換性はなくなっており、よく似てはいるが別のチップと考えても良いかと思う。まぁこれをMotorolaから出したら、顧客は相当混乱しただろうから、その意味ではMOS Technologyから別のCPUとしてリリースしたのは正解かと思う。

 MOS 6501とMOS 6502の違いはピン配置であり、MOS 6501はMC6800互換となっていた。一方MOS 6502はピン配置を変えると共に、内部クロックで動作する(外部にクロックが必要ない)構成となっていた。このMOS 6501とMOS 6502は1975年9月に開催されたWESCONで販売(会場での販売は禁止されていたので、会場そばにあるSt. Francis Hotelのスイートルームに顧客を案内してそこで販売した)すると共に、複数の媒体に記事を掲載して読者の関心を集めた(図3〜5)。ちなみにこのWESCONにおける価格はMOS 6501が20米ドル、MOS 6502が25米ドルで、MC6800が当初360米ドル、1975年の時点でも69米ドルで販売されていたことを考えると、当初のもくろみはほぼ成功したと考えて良いかと思う。

出所:EDN 1975年9月20日号
出所:EDN 1975年9月20日号より
出所:EDN 1975年9月20日号より 出所:EDN 1975年9月20日号より。他にもElectronics、EETimes、Electronic News、BYTE、Microcomputer Digestなどにも同様の記事が掲載された[クリックで拡大]

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