■リチウムイオン
あらゆる民生製品で使われる最もポピュラーな充電式電池技術である。リチウムは超軽量金属で、すべての電池材料のなかでも最高のエネルギー密度をもつ。しかし一方で、非常に反応しやすく、充電中に不安定になるという欠点もある。電池には、より安定したリチウムイオンの形で使用されることが多い。しかし、イオン化しても特定の条件下では発火しやすいという性質は変わらない(リチウムイオンセルの安全性については参考文献*2)の別掲記事「安全第一」を参照)。
リチウムポリマーセルの特性はリチウムイオンに似ているが、半剛体で薄型、寿命はリチウムイオンの半分という特徴がある。リチウムポリマーセルの「柔軟性」は誤って解釈されることが多い。リチウムポリマーセルはデバイスに組み込む時に水平でなくてはならず、電池システムに組み込むために曲げることさえしてはいけない。さらに価格も高価である*3)。
■ニッケル系電池
一般的なものにNiCd(ニッケル・カドミウム)とNiMH(ニッケル水素)がある。ニッケルカドミウムは大電流を流せるため、ポータブル電源の主要技術となっている。たとえば、パワードリルが十分なトルクを得るためには大電流が必要である。しかし、カドミウムには毒性があり、メーカーはRoHSの要件を満たすため、できるだけニッケルカドミウムを廃止しようとしている。NiMHはコードレス電話などの低価格システムでよく使用される。リチウムイオンは大電流にも対応し、価格も安いことから、NiCdとNiMHの領域を侵食しつつある。
■セル
電池パック専用電池。もっとも一般的なリチウムイオンセルは18650型で、直径18mm、長さ65mmの円筒形である(図A)。
■電池パック
セルと保護/認証/セキュリティ回路で構成されている(図B)。充電式リチウムイオン電池のほとんどは、携帯電話機などに使用されるセル1本の電池パックか、もしくはノート型パソコンに使用される最高4本のセルを内蔵したものである。電池パックは、単にセルを接続してパッケージ化したものではない。リチウムイオン安全規格により、安全回路を電池パックに組み込むことが義務付けられている。1本のリチウムイオンセルだけを使用する機器でさえ、シングルセルパックを使用し、セル周辺に安全回路を組み込み、ユニット全体がプラスチックで覆われていなくてはならない。携帯電話機などに使用されるシングルセル電池パックには7〜8W、ノート型パソコンの4セルパックには35〜70W の電力が必要とされる。
■充電サイクル
リチウムイオン電池のほとんどは、容量の80%まで高速充電され、その後電流を落として100%まで充電される。1充電サイクルは、電池電力のすべてを使い切ることを言うが、充電が1回である必要はない。例えば電池の電力が半分消費された後にフル充電し、このサイクルを翌日も繰り返した場合は、1充電サイクルと考えられる。充電サイクルが完了するたびに、電池容量が少しずつ減少する。
※2…EDN Japan 8月号 p.57 「保護回路で静電破壊、ノイズに強い製品を作る」
※3…Tichy, Robin, "Create an Ideal Battery Pack for Mobile Medical Devices," ECN, Sept 1, 2005.
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