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組み込みプロセッサにまつわる取捨選択――組み込みシステムに最適な処理技術の組み合わせとは(3/4 ページ)

» 2006年04月01日 00時00分 公開
[Robert Cravotta,EDN]

アルゴリズムを回路に自動変換

 低コスト、低消費電力で高い処理パフォーマンスを実現するもう1つの方法として、特定用途向けのハードウエアアクセラレータとコプロセッサを利用する方法がある。このようなアクセラレータは、FPGAで実行可能な個別のデバイスまたはIP(知的財産)として入手できる。アクセラレータが量産アプリケーションに有用であることが実証されれば、プロセッサのサプライヤが自社製品にアクセラレータを統合することも考えられる。たとえば、米Texas Instruments社製のDSPには、Viterbiデコード用のハードウエアアクセラレータが組み込まれている。ライセンス可能なアクセラレータや統合アクセラレータがたやすく入手できるようになれば、アクセラレータ自体は設計の差異化要因にならない。アクセラレータの価値は、計算負荷を軽減して差異化要因となる機能をシステムに追加したり、システムのコストや消費電力を低減したりできる機会をもたらすことにある。

 2005年は、ハードウエア実装でアルゴリズムの実行速度を上げるための設計支援ツールが数多く発売された*2)*3)。これらのツールを使用すれば、設計者はより簡単にカスタムアクセラレータや命令セット拡張を開発できる。アクセラレーション機能は一般に入手できるものではなく、アクセラレーションIPのように今すぐ商品化できるものでもないため、カスタムアクセラレータを開発できることは大きな差異化要因となり得る。

 ほとんどの場合、これらのツールはFPGAへのソフトウエア/ハードウエア実装をターゲットにしている。モデルやソースコード、そしてCriticalblueの場合はオブジェクトコードをハードウエア実装する際の変換方法は数多くあり、業界関係者は今後数年、この部分での処理パフォーマンスの向上に多くのエネルギーを費やすことになるだろう。これらの実装には固定機能のRTLブロックを使うものや、ツールを使ってパフォーマンスを最適化できるプロセッサブロックを使うものもある。

 米Stretch社のコンパイラツールは、プロセッサコアと、プログラマブルファブリック(プログラム可能な回路)を1つのデバイスに統合したプロセッサデバイスをターゲットにしている点で他のツールと異なる。同社のコンパイラツールの1つの目的は、設計者が実装よりもアルゴリズムと機能に焦点を当てて開発できるようプログラマブルロジックを抽象化することである。プロセッサコアとFPGAを統合した混在プロセッサの復活が期待され、それに伴ってソフトウエアからハードウエアへの変換を自動化するツールが登場する可能性が高い。

 高性能民生機器向けアプリケーションでは、アクセラレータまたはコプロセッサを組み込んだFPGAを、ホストプロセッサまたはDSPにリンクさせるのが一般的になりつつある。FPGAの価格が下落しているため、設計者は負荷の大きい計算をFPGAに肩代わりさせることで全体の設計コストと消費電力量を減らせる他、それほどパワフルでないホストプロセッサまたはDSPを使用することができる。FPGAの高い並列処理能力を利用できるアプリケーションでは、全体の電力消費量を大幅に低減できる。 特に、FPGAによる実装で、システムが高性能プロセッサを使用する場合よりもはるかに低いクロックレートを使用できる場合には有効だ。

 ホストプロセッサまたはDSPのコプロセッサとして使用されるFPGAの特長は、高度な並列処理を要するアルゴリズムや、厳しいタイミング条件に合わせてパイプライン処理できるアルゴリズムである。しかしコストと消費電力の面から見ると、特に複雑な制御構造を必要とするシステムでは、ホストプロセッサやDSPを完全にFPGAに置き換えることは効率的とは言えない。FPGAのサプライヤはこのことを認識し、FPGAで動作する独自開発のプロセッサコアを提供している。FPGAベンダーから提供されているツールは、標準的なペリフェラルを組み合わせたプロセッサコアの設定をサポートしているほか、カスタムアクセラレータとプロセッサコアとの緩結合また密結合をサポートしている。つまり、これらのツールを使用すれば、設計者は少量のSoC(system on chip)の代わりとしてFPGAを利用しやすくなるのだ。


脚注

※2…"EDN hans-on project : Accelerate your performance" EDN, Nov 11, 2004, pg 50.

※3…"EDN hans-on project, part2 : Automate your acceleration" EDN, Dec 7, 2004.


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