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» 2007年01月01日 00時00分 公開

電流モード制御DC-DCコンバータの特性改善電流検出はどこで行うべきなのか(3/3 ページ)

[Claude Abraham(米Bendix Commercial Vehicle Systems社),EDN]
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最適な電流検出位置

 上述した通り、前縁スパイクの問題に対処するには工夫が必要である。前縁スパイクは間違いなくPCMCに関する最も厳しい制限であり、PCMCの価値を左右するものだ。

 問題は、「電流検出素子をどこに置くか」ということに尽きる。言い換えれば、電流検出素子を適切な位置に配置すれば問題は解決する。以下、各種コンバータに対する最適な電流検出位置について順に検討を進める。


■降圧型コンバータ

図1 降圧型コンバータにおける電流検出位置 図1 降圧型コンバータにおける電流検出位置 

 降圧型コンバータには、電流検出位置として数カ所の候補がある。まず、PCMCにおいては、図1の点Bが最も代表的な位置だ。パワースイッチに流れる電流は、パワースイッチがオンしたときにインダクタに流れる電流と等しい。言い換えれば、パワースイッチに流れる電流を検出することによってインダクタに流れる電流の波形を取得することができる。この位置で電流を検出した場合、パワースイッチがオンしたときにしか電流検出用の抵抗(以下、検出抵抗)に電流が流れないので電力損失を少なく抑えられる。

 点Bは、デューティサイクルが小さいコンバータの場合に有利な検出位置である。また、電流がパルス的であるため電流トランスによる検出が可能であり、これにより電力消費をさらに低減することが可能だ。さらに、点Bにおけるコモンモード電圧はスイッチがオンしたとき、オフしたときとも入力電圧に等しく安定である。以上のような理由から、PCMCに対しては電流検出素子の配置位置として点Bが広く使用されている。また、これが最適な位置であると考えられる。

 次に、図1の点Fについて検討する。この位置はACMCにおいてよく使用されてきた。点Fでは、コモンモード電圧がスイッチオン/オフ時ともにほぼ出力電圧に等しく安定である。また、点Fを流れる電流は、インダクタの平均電流(平均負荷電流)に対応する。さらに、点Fではインダクタを流れる電流の全周期の波形を検出できる(これはACMCに必要なことであるがPCMCには不要である)。ACMCにおいて点Fは“静寂”(電圧または電流の変動が少ない)であり、最適な位置である。

図2 計測アンプを利用した電流検出 図2 計測アンプを利用した電流検出 

 次に、点B、Fの問題点について検討する。点Bでは、検出電流はパルス的に流れる。パワースイッチがオンしたとき、検出抵抗に流れる電流は急速に増加し、スイッチがオフしたときに急速に減少する。スイッチがオンしたときには、出力インダクタンスおよび周辺回路の寄生インダクタンスの影響により、大きな前縁スパイクが発生する。このスパイクはフィルタでは十分に除去できない。一方、点Fでは、パルス的にではなく、全周期で電流が流れ続ける。そのため、パワースイッチがオンしたときのみ電流が流れる点Bと比較して、検出抵抗による電力消費が多くなる。また、点FではDC電流が重畳され、スイッチング動作もないため、電流トランスは利用できない。これらの理由から、点BはPCMCの場合に、点FはACMCの場合に一般的な配置場所となっている。

 しかし、PCMCで点Bを選択するのは必ずしも最適とはいえない。点Fでは、検出抵抗をインダクタと直列に配置するので、スイッチのオン/オフ時にスパイクが発生しない。このことが、点Fに配置することの重要な利点の1つである。PCMCにおいてスパイクをなくす方法の1つは、ACMCの場合と同様に電流検出位置を点Fにすることである。消費電力の増大というデメリットはあるが、これは計測アンプを使用することによって緩和できる。検出抵抗の値を小さくし、その近くに計測アンプを配置することによってノイズと消費電力を低く抑えることが可能になるのだ(図2)。

 適切な計測アンプの例としては米Texas Instruments社の「INA139」が挙げられる。これは差動型のトランスコンダクタンスアンプであり、電源電圧を越えるコモンモード入力電圧を許容する。そのトランスコンダクタンスは1mS(millisiemen:kΩの逆数に等価)で、利得帯域幅積(GB積)は4.4MHzだ。このアンプで不十分な場合には、その後段にシングルエンドのオペアンプを使用すればよい。この方法によれば、スイッチングノイズをほとんど含まない検出波形を得ることができる。なお、そのデメリットとしては、追加するアンプのコストと、全周期にわたって電力を消費することが挙げられる。

■昇圧型コンバータ

図3 昇圧型コンバータにおける電流検出位置 図3 昇圧型コンバータにおける電流検出位置 

 昇圧型コンバータにおいて、静寂な検出点は図3の点A、Bとなる。インダクタを流れる電流の検出には点Bが最適であり、ACMCの場合、ここが選択される。従来、PCMCでは点Dが使用されることが多かったが、PCMCでも点Bを使用すべきである。点Bを検出点とした場合、検出抵抗はインダクタと直列となり、またコモンモード電圧が一定なので、電流波形に前縁スパイクが生じないからだ。

 ただし、降圧型コンバータの場合と同様に、点Bではパルス的にではなく、全周期で電流が流れるため、点Dの場合よりも消費電力が大きくなる。

■極性反転型コンバータ

図4 極性反転型コンバータにおける電流検出位置 図4 極性反転型コンバータにおける電流検出位置 

 極性反転型コンバータ(昇圧/降圧コンバータ)では、従来PCMCに対しては図4の点Bが、ACMCに対しては点Dが使用されてきた。PCMCに対して点Dを使用すると静寂だという利点があるが、消費電力が増加する。

 市販のPWMコントローラの1つ、TI社の「UC2572」シリーズは極性反転型コンバータ専用であり、点Dを検出点としている(図5(a))。同製品はフォワード制御方式というよりも、直接デューティサイクルを制御するVMCタイプのものだといえる。図5(b)に検出電流の波形を示す。

図5 UC2572の利用例 図5 UC2572の利用例 電流検出位置は、図4の点Dに相当する(a)。検出抵抗を出力インダクタと直列に配置している。検出電流波形はきれいだとはいえないが、問題となるほどのスパイクは発生していない(b)。立ち上がり/降下部が直線状に変化しているのは計測上の問題である。

■非反転型コンバータ

図6 非反転型コンバータにおける電流検出位置(その1) 図6 非反転型コンバータにおける電流検出位置(その1) L6は図7のL4とL5を統合したもの。点Fは示していない。

 非反転型コンバータ(昇圧/降圧コンバータ)の場合、インダクタ電流を検出するだけなら、図6のB、C、D、E、G、H、I、Jが候補になる。しかし残念ながら、これらすべての点には電流/電圧の面でそれぞれに欠点がある。点B、D、H、Jでは電圧は静寂だが、電流がパルス的であり、パワースイッチがオンした際にスパイクが発生しやすい。点C、Iはどちらも同程度に電流ノイズが大きく、しかも電圧はVGからグラウンドレベルまで変化するパルスである。点E、Gでは電流は静寂だが、電圧がパルス的だ。このように、いずれも電圧/電流のどちらかの面で静寂ではない。こうして見ると、結局、電流検出に適した点はないようにも思える。

図7 非反転型コンバータにおける電流検出位置(その2) 図7 非反転型コンバータにおける電流検出位置(その2) 
図8 非反転型コンバータにおける検出電流波形 図8 非反転型コンバータにおける検出電流波形 図9に示すように、2個のインダクタの中間点に配置した検出抵抗の出力を計測アンプで差動増幅した結果である。

 しかし、非反転型コンバータの構造をよく見ると、降圧部分とその後段の昇圧部分がカスケード接続されていることが分かる(図7)。非反転型コンバータでは、インダクタが降圧部分では出力段に位置し、昇圧部分では入力段に位置する。図7のように、点Fは直列接続された2個のインダクタの中間点にあるため電流的には静寂になる。また、電圧も静寂で安定している。

 パワースイッチがオンした際には、点EはVG近く、点Gはグラウンド近くの電圧になる。そのため、点Fの電圧はVGの約1/2になる。パワースイッチがオフした際には、点Eがグラウンド近くの電圧になり、点Gが出力電圧近くの電圧になる。そのため、点Fの電圧は出力電圧の約半分になる。具体的な値でいえば、入力電圧VGが9V〜16Vの範囲にある場合、パワースイッチがオンした際の点Fの電圧は4.5V〜8Vである。出力電圧が12Vであるとすると、パワースイッチがオフした際の点Fの電圧は約6Vになる。点Fの電圧は完全には一定ではないが、ほかのいずれの個所よりも安定している。図8に示すように、点Fで検出された電流のオシロスコープ波形は静寂かつ安定しており、ジッターもない。また、計測アンプにより、コモンモード電圧の揺らぎもある程度除去されている。

 以上のことから、非反転型コンバータにおける電流検出に最適な位置は、2個の直列接続インダクタの中間点だといえる。ただし、2個のインダクタを、2倍のインダクタンスを持つ1つのインダクタとしてしまうと、この静寂なポイントがなくなり、望ましくない結果になる。

図9 非反転型コンバータで用いる電流検出回路 図9 非反転型コンバータで用いる電流検出回路 

 検出抵抗と計測アンプは図9のように配置するのがよい。この例におけるコンバータは、入力電圧が9V〜16V、出力電流が4Aで出力電圧は12.1Vである。入力電圧が低い場合、デューティ比は0.6(60%)であり、検出抵抗での消費電力は0.303Wとなる。従来のPCMCの検出点である点Bに検出抵抗を配置した場合の消費電力は0.182Wであり、0.121Wの差がある。出力電力が48.4Wなので、この値は全電力の0.25%の効率低下に相当する。一方、入力電圧が高い場合には、デューディ比が0.452(45.2%)で、検出抵抗での消費電力は0.166Wとなる。点Bで検出する場合の消費電力は0.075Wなので、差異は0.091Wであり、0.19%の効率低下に相当する。

 一般に、非反転型コンバータでは、出力段のインダクタは1個で構成されている。上記のように、おのおのの値がその1/2のインダクタを2個直列に接続する構成とし、その中間点を電流検出位置とすることで、前縁スパイクの問題を解消でき、静寂な検出電流が得られる。その結果、PCMCを低ノイズで実現できる。

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