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次世代アナログLSIでは、素子モデルの標準化が急務(4/4 ページ)

» 2007年02月01日 00時00分 公開
[Shye Shapira/Boris Mishori(Tower Semiconductor),EDN]
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山積する課題

 CMCは、モデルの機能と堅牢性については考慮しているが、産業向けの標準的なものとしての実用性については検討が不十分である。設計者は、コンパクトモデルで容易にネットリストを作成できるのか、あるいはプロセスのばらつきを記述するモデルはどのように使用すればよいのかといったことを知りたいと思っている。しかし、こうしたことに対する解が用意されているわけではない。

 通常、プロセスのばらつきは、素子性能の最大値と最小値の範囲で表した「コーナーケース」としてモデル化される。CMCは、代表的な素子の動作を表すモデルを開発/標準化したが、コーナーケースの定義は、標準化団体ではなく“モデル作成グループ”の仕事である。統計的モデリングのように正確さを追求する場合、プロセスばらつきによって生じる電気的な動作ばらつきを記述するために、同じモデルに対して多くのシミュレーションを行う。モデル作成グループは、コーナーケースの定義や統計的モデリングの実践のために開発作業を行っているが、コーナーケースを容易に定義するためのモデルパラメータの選定にはあまり力を入れていない。

 標準化がなされていないその他の例としては、チップ上の同一素子間のばらつきに対するミスマッチモデリングが挙げられる。既存のモデルは、ミスマッチモデリングや統計的モデリングをカバーしておらず、この問題への対処はモデル作成グループの仕事となっている。標準が存在しないため、シミュレータ間の移行においては、セグメント化された抵抗モデルの場合と同様の問題が生じやすい。

 FSA(Fabless Semiconductor Association:ファブレス半導体協会)は、このようなモデルの標準化に向けた活動を開始した。コンパクトモデルは、ファウンドリのモデリングエンジニア、LSI設計者、IP(intellectual property)ベンダー、EDA企業、PDK開発者など、多くの人/企業に関連するものである。FSAはこの複雑な状況を認識し、MSRF(mixed signal/radio frequency)PDKワーキンググループ、MSRF Modelワーキンググループ、MSRF IPワーキンググループなどを設置した。

 これらのグループの主な目標は、MSRF設計サービス、ライブラリの作成、モデル化、IPの開発、ウェーハの処理、組み立て、テストにおける要求を定義することや、情報配信形式を標準化すること、品質基準を定義することなどである。その活動の結果、主要なファウンドリはPDKおよびMSRF SPICEモデルチェックリストを用意して利用するようになってきた。これらの文書には、コンパクトモデル、設計ルールファイル、パラメータ化されたセルジェネレータに関する情報が記載されている。ファブレス企業はこの情報を用いて、さまざまなファウンドリのモデルの品質や設計環境キットを比較し、パートナーとなる設計委託先企業やファウンドリ企業を選択すればよい。

 CMCもFSAもモデルの標準化に大きく寄与したが、まだ多くの問題点が残っている。今後、これらの団体やツールベンダーは、アナログ回路アプリケーションの数や種類の増加に伴ってコンパクトモデルに課せられる要求に対応し、シミュレーションプラットフォームの標準化を進めるという課題に取り組んでいくことになる。

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