印加電圧に依存してコンデンサの特性は変化するが、その変化の割合は印加電圧がDCかACかによっても左右される。DC電圧印加とAC電圧印加の違いは以下のようになる。
■DC電圧印加の影響
図3に、class2で容量が1μFのコンデンサにDC電圧を印加した場合に容量値がどのように変化するかを示した。図から分かるように、class2のコンデンサはDC印加電圧の上昇とともに容量が減少する傾向にある。
評価時に印加したDC電圧レベルは、オーディオアンプの入力用カップリングコンデンサに加わる代表的な値である。この電圧範囲を超えるDC電圧が印加された場合には、コンデンサ容量はさらに低下する。
■AC電圧印加の影響
AC電圧の場合はDC電圧とは異なり、印加電圧の増加に対し容量が増加する傾向になる(図4)。ただし、印加するAC電圧があるレベルをはるかに超えるような高い値になると、DC電圧印加時と同様に容量値は低下する。とはいえ、そのような容量低下が生じるAC電圧は、オーディオで利用される電圧範囲を大きく超える値である。図4のデータでは、印加電圧を通常使用される範囲に制限している。
ここからは、カップリングコンデンサの違いにより、オーディオ特性にどのような影響が現われるのかを示すいくつかデータを見ながら、パソコンのオーディオ音質を最良にするためのコンデンサの選択法について解説する。
図5に示したのは、オーディオアンプの入力用カップリングコンデンサを変更して、アンプ出力の特性を評価した結果である。このオーディオアンプの入力インピーダンスは40kΩ(代表値)であり、入力部には容量1μFの2種類のコンデンサを使用している。定格電圧が10V(0603サイズ、0.6mm×0.3mm)と25V(1206サイズ、1.2mm×0.6mm)の2種類だ。測定には米Audio Precision社(以下、AP社)製のオーディオアナライザを用い、影響が大きい低周波数(1kHz以下)領域でのTHD+Nを評価している。図5を見ると、定格電圧10V品の場合、25V品の場合に比べて歪が大きくなってことが分かる。また、図6には、25V品を用いた場合の出力信号の周波数スペクトラムを示した。
定格電圧の低いコンデンサは電圧係数が高いため、AC電圧の印加によって容量が変化しやすく、THD+Nが劣化しやすい。従って、オーディオの低周波域でのTHD+Nを小さくするためには、電圧係数が小さいコンデンサを用いることが不可欠である。つまり、電圧係数を低下させるために、定格電圧の高いコンデンサを選択すべきだ。
以上の結果から、Vistaのロゴプログラムが要求するオーディオ規格への対処法としては、class2コンデンサの中から定格電圧の高いものを選択するという方針が有効になる。その際、注意すべきことは、定格電圧が高くなるほど外形が大きくなるということだ。1μF(公差±20%)のセラミックコンデンサの場合、10V品であれば0603サイズだが、25V品では1206サイズと大きくなってしまう。
Microsoft社が推進するUMPC(Ultra-Mobile PC)などによって、ノート型パソコンのプリント基板面積は縮小する傾向にある。しかし、ヘッドホン用アンプなどの入力カップリングコンデンサには例外的に大型コンデンサを用いるべきである。それによって、20Hzから20kHzでのTHD+NをVistaロゴプログラムが要求するオーディオ規格に適合させることが可能になるだろう。
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