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フェムトオーダーの電流測定に挑む事例に学ぶその要点とテクニック(1/5 ページ)

微小電流の測定は困難な作業である。しかし、製品によってはスペックの保証のために、量産時の検査工程でフェムトオーダーの電流を測定しなければならないこともある。本稿では、2つの事例を通し、微小電流の測定に必要となる部品や装置、技術知識、測定回路の設計手法などを紹介する。

» 2007年08月01日 00時00分 公開
[Paul Rako,EDN]

なぜ必要なのか

 多くのアプリケーションでは、微小電流を測定する必要に迫られることがある。典型的な例は、光量を得るために、フォトダイオードに流れる電流を測定するケースだ。CT(computed tomography:コンピュータ断層撮影)スキャナ、ガスクロマトグラフ、光電子増倍管、粒子/ビームのモニタリングといった科学的なアプリケーションは、いずれも微小電流の測定を必要とする。そのほかに、半導体やセンサー、ワイヤーのメーカーなども、デバイスの特性を評価するために微小電流を測定する必要に迫られる。データシートに記載する仕様を確定するためには、リーク電流や絶縁抵抗などを正確に測定しなければならない。

 「部品のデータシートは契約文書である」と認識しているエンジニアはほとんどいない。しかし、データシートはデバイスの動作を定義するものであり、動作に関して問題が生じれば、データシートに記載されている仕様が必ず問題視される。最近、大手アナログLSIメーカーが、ある顧客に危うく告訴されそうになった。その部品の仕様書には、動作電流が数マイクロアンペアと記載されているのに、顧客が購入した部品の動作電流はそれよりもかなり多かったというのである。

 その後の調べにより、実際には顧客の組み立て工程に問題があることが分かった。PCB(プリント回路基板)の洗浄は適切に行っていたのだが、組み立て作業者らがPCBを手にとる際、クリティカルなノードに指紋を付けてしまっていたのだ。

 そのアナログLSIメーカーは微小電流を測定する方法を確立していた。そのため、部品が正常に動作していたことを証明できた。その結果として、PCBの汚れが原因でリーク電流が発生していたことが突き止められたのである。

なぜ難しいのか

 微小電流の測定が困難なのは、あらゆる要因が測定に影響を及ぼすためだ。ほとんどすべての回路でそうであるように、EMI(electromagnetic interference:電磁波干渉)やRFI(radio frequency interference:無線周波数干渉)によって誤差が生じる可能性がある。測定する電流がフェムト(10の−15乗)アンペアのオーダーである場合、より影響を受けやすくなる。

 微小電流を扱う場合には、静電カップリングによっても問題が生じ得る。また、湿度によってコンデンサの値が変化し、表面リーク電流が増加するケースもある。加えて、振動によって回路に圧電効果が生じたり、室内ファンによるちょっとした温度変化によってPCB上に温度差が生じたりすることでも測定値に誤りが発生する。さらには、室内灯によって正確な測定が妨げられることもある。例えば、蛍光灯からの光がダイオードに入射する際、ガラスパッケージによって干渉が起きることなどが考えられる*1)。

 本稿では、PCBにおけるリーク電流やアンプの入力電流による誤差、さらには宇宙線にも配慮しなければならなかった2つの事例を取り上げる。それを通して、微小電流の測定に当たってはどのようなことに注意し、どのような工夫が必要になるのかを紹介する。


脚注

※1…Long, James, "Sidebands be gone, or let there be(no)light," EDN, Oct 12, 2006, p.40.


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