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» 2007年09月01日 00時00分 公開

M2Mネットワークの「今」あらゆる機器をワイヤレスでつなぐ(2/4 ページ)

[Paul Rako,EDN]

携帯電話網とISM帯域

 ここで、M2Mワイヤレスネットワークとはどういうものなのか改めて考えてみる。現在のM2Mワイヤレスネットワーク機器は、従来の携帯電話網か、800MHz/900MHz/2.4GHzの新しいISM(産業/科学/医療)帯域のいずれかを利用している。しかし近い将来は、10GHz〜20GHz帯域ではライセンスを受け、2GHz〜11GHz帯域ではライセンスなしで利用できるWiMAX(worldwide interoperability for microwave access)ネットワークが優勢になると見られている。その一方で、携帯電話会社や米Intel社のような巨大企業は、アナログテレビ放送で利用されている50MHz〜200MHz帯域にも注目している。これらの低い周波数帯域を利用すれば、小さい電力で長距離の通信が可能になるほか、雨や霧で受信状態が影響されることもないからだ。WiMAXへの期待が高まっているとはいっても、これはまだ未来の技術である。現時点で有力なワイヤレス技術は、携帯電話網とIEEE 802に準拠したISM帯域の2つだといえる。

 携帯電話網の利点は、長距離通信が可能なことと、広く普及していることである。多くのフィールドアプリケーションエンジニアは、携帯電話網を介してウェブに接続する「Verizonカード」や「AT&T PCカード」が会社から支給されるまでは、IEEE 802のホットスポットを探すのに苦労していた。しかし、今では米国内のほぼどこからでも電子メールをチェックすることができる。携帯電話網を利用したM2Mネットワークも、これと同様のメリットを享受できるだろう。例えば、GPS(global positioning system)受信機をワイヤレスモジュールにつなぎ、携帯電話網に接続することで車両の位置を監視するOnStarサービスや、タクシー会社などの遠隔運用システムを利用できる。この特性により、車両のオーナーは走路を分析できるとともに、ドライバーの行動も監視できる。車体にも、歪(ひずみ)や劣化、交通量などを監視するためのセンサーを取り付けることが可能かもしれない。これらのセンサーを保守/交通制御用コンピュータに接続すれば、地震や事故などによって車体に異変が起った場合、緊急信号をコンピュータに送ることができる。ただ、こうした携帯電話網を利用したシステムにも欠点はある。コストがかかり、消費電力が大きいことだ。携帯電話機の普及により、ワイヤレス通信モジュールの部品コストは急速に下がってきてはいるものの、ネットワークの利用にかかる通信コストは依然として高い。M2Mネットワークシステムで送信されるのはわずか数バイトのデータであることが多い。それにもかかわらず、テレコム会社は接続単位あるいは分単位での課金モデルを固持しているからだ*2)

 一方、IEEE 802方式のM2Mワイヤレスネットワークは、欧州では800MHz、米国では900MHz、その他の地域では2.4GHzのISM帯域で運用されている(図2)。ほかにも、車庫の扉を開閉するリモコンに使用されている434MHzや、より信頼性の高い通信が可能な医療用帯域など、ほかの周波数帯域で運用できる独自ネットワークがある。このタイプのネットワークで最もよく知られているのが「ZigBee」だろう。ZigBeeでは電池駆動の小型機器間の通信を可能にする標準プロトコルが利用されている。ZigBeeを支持する一部の人たちは、この技術を利用すれば電池寿命は10年にも及ぶと主張しているが、実際には2年、せいぜい5年といったところだろう。これらのネットワークの最大の問題は、電波干渉と電池の寿命である。2.4GHz帯域の利用にはライセンスが不要なので、1つのエリアに設置できるトランスミッタの数に制限がない(図3)。そのためIEEE 802方式のいくつかのネットワークを共存させられると主張する人もいるが、それが裏目に出る恐れがある。2.4GHz帯域のトランスミッタが世界中で使われるようになれば、有効な通信範囲は半径数フィート(1フィートは30.48cm)に狭まり、短い距離でもデータレートに深刻な影響を及ぼすことになるだろう。米EDN誌のシニアテクニカルエディタであるBrian Dipertは、ワイヤレススピーカシステムのテストでこの現象に遭遇したという*3)。ワイヤレススピーカを使うと、IEEE 802.11準拠のワイヤレスLAN(Wi-Fi)が機能しなくなるか、データレートが50%に低下したのだ。

図2 世界の主要な通信帯域 図2 世界の主要な通信帯域 ワイヤレス通信機器は世界中の2.4GHz帯域で機能する。ほかの周波数帯域は地理的な制約を受ける(提供:TI社)。
図3 ニューヨーク市内のIEEE 802.11ホットスポット 図3 ニューヨーク市内のIEEE 802.11ホットスポット ニューヨーク市内では、互いに干渉するほどにホットスポットが密接している(提供:WiGLE.net)。

 電波干渉に関する懸念はあるが、成功している一部のM2Mワイヤレスネットワーク用途には、ISM帯域が利用されている。米VeriFone Holdings社のPOS端末にはイスラエルConnect One社製のインターネットコントローラチップ「iChip」が組み込まれており、ワイヤレスLANでクレジットカード会社に接続して購入時の認証が行えるようになっている。その特徴はトランザクションのスピードだ。機器に組み込まれたモデムでダイヤルアップ接続して通信を確立し、暗号化して16桁のクレジットカード番号を認証してもらうまでには何秒もかかる。それに対してM2Mワイヤレスネットワークシステムはよりスピーディにこれらのタスクを処理できる。しかも、キャッシュレジスタに電話線やイーサーネットケーブルをつなぐ必要もない。これらのシステムはネットワークを利用して接続するため、広い店舗内にあるすべてのキャッシュレジスタが同時にクレジットカード認証サーバーにアクセスできる。この技術は、ファーストフードの店や駅のキオスクなど、客が支払いをスピーディに済ませることが重要となる場所では便利だ。このシナリオでは、キャッシュレジスタのすべてにIPアドレスが割り当てられ、すべてのレジスタがインターネットに接続できる。

 しかし、こうした機器をインターネットに直接つなぐのが必ずしもよいことだとは限らない。ZigBeeを支持する人たちは、数十個、数百個、あるいは数千個ものセンサーを、コーディネータと呼ばれる中央ノードに接続する構想を持っている。インターネット経由でデータを送受信する必要がある場合はゲートウエイをインストールすることができる。ZigBeeネットワークは通常のサブネットとは異なるが、機器間と中央コーディネータへのデータのルーティングには、パケットルーティングやほかの高度な手法が用いられている。ZigBeeの代表的な用途としては、ビル内のHVAC(換気空調)/照明制御、工場や現場でのデータ収集などが挙げられる。道路上の反射物にZigBeeノードを埋め込むという変わった使い方もある(図4)。これらのZigBeeノードは、駐車場スペースの利用率をリアルタイムで監視/報告し、利用者が駐車料金を払っているかどうかを検証するためのデータ収集を可能にする*4)。業界内にはRFID方式がM2Mワイヤレスネットワークに含まれるという意見もあるが、もちろんRFID技術は異なる市場だという見方もある。

図4 ZigBeeの応用例 図4 ZigBeeの応用例 Streetline Networks社は車の存在を検知するワイヤレスセンサーを駐車用レーンに組み込んでいる(a)。このセンサーが、パーキングメーターの情報(b)と合致しているかをチェックし、空きスペースにドライバーを誘導する(提供:Streetline Networks)。

脚注

※2…(編集部注)日本では定額制が始まっている。

※3…Dipert, Brian, "Rocketfish: Spectrum Shark," EDN, May 6, 2007, http://www.edn.com/blog/400000040/post/490009049.html

※4…Van Horn, John, "System Data Show Half of Meter Income Goes Uncollected," Parking Today, p.24, March 2007, http://www.parkingtoday.com/pluscontent/0307-2.pdf


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