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» 2007年09月01日 00時00分 公開

M2Mネットワークの「今」あらゆる機器をワイヤレスでつなぐ(3/4 ページ)

[Paul Rako,EDN]

ネットワークと電池寿命

 M2Mワイヤレスネットワークの利点と欠点をより深く理解するためには、実際の無線通信ネットワークと高位レベルのシステム設計の2つの分野では、アナログ設計の原則が適用されることを覚えておくことが大切だ。高速CMOSの進化により、2米ドル程度でRF部を作ることが可能となるかもしれないが、それはZigBee/IEEE 802.15.4仕様のRF部であり、携帯電話網を利用できるRF部ではない。さらに、そのワイヤレス機器をインターネットに接続するには、TCP/IPプロトコルスタックを処理できるプロセッサを購入し、IPアドレスを割り当ててルーティングする方法を考えねばならない。先に述べたように、ベンダーはよく電池の使用時間について語る。メッシュネットワーク内のワイヤレス機器は、端末装置からのデータをメッシュの周辺部に渡す。この仕組みが、メッシュのより中央寄りにある機器の電池寿命に影響を及ぼす。さらにアドホックネットワークのシステムでは、新しい機器を特定してネットワークに組み込むために多大なリソースを必要とする。機器は確立されているメッシュ経路に沿ってルーティングできないとき、ネゴシエーションによって新しい経路を確立しなくてはならない。この動作ではかなりの電力が消費される。さらに悪いことに、ほかの機器よりも早く電池を交換しなくてはならない機器が出てくる。あるいは、システム保守の手順書には電池の消費量が多い機器に合わせ、メッシュ内のすべての電池を定期的に交換するように記述されている。そのため、まだ使える電池が破棄されてしまうケースがあるかもしれない。

 2.4GHz帯域で動作するZigBeeネットワーク機器は240キロビット/秒でデータを送信できるが、米国のISM帯域である915MHzを利用する機器は40キロビット/秒で、欧州のISM帯域である868MHzを利用する機器はわずか20キロビット/秒でしかデータを送信できない。従って、混雑している2.4GHz帯域の外で機器を使いたいと思っても、データレートの遅さが電池の使用時間を縮め、逆に高くつく可能性がある。

 携帯電話網を使ったネットワークは「どこでも」接続できる利便性はあるものの、「リアルタイムでいつでも」接続できるとは限らない。接続の信頼性を高めるために独自のネットワークと周波数を利用することも考えられるが、それではZigBeeならではの低コストという恩恵を受けることができない。アドホックネットワークを形成するセルフヒーリング(self healing)機器が最も安く作れるとも限らない。当然のことながら、電波の干渉問題やネットワークトポロジ、通信プロトコルなどの要因が電池寿命に影響を及ぼす。

自動演奏ピアノでひらめき

写真1 女優のHedy Lamarr氏 写真1 女優のHedy Lamarr氏 同氏は1942年にRF周波数ホッピングスペクトラム拡散のコンセプトを思いつき、特許を取得した(提供:Mischief Films)。

 スペクトラム拡散の技法を用いたとしても帯域幅を無限に利用できるわけではない。これらの技法では、トランスミッタに帯域幅を共有させることができるが、すべてのトランスミッタが同じプロトコルを使っていれば、トランスミッタの数が増えるほどデータレートか通信距離、あるいはその両方が低下する。ここに1つの例がある*5)。それは2.4GHzのISM帯域にあるすべての機器が、干渉によっていかに無能となるかを示すものだ。ライセンス不要のISM帯域には故意に出力される干渉源が含まれている。開発者らがライセンス不要の2.4GHz帯域を確立したのは、電子レンジのマグネトロンがこの周波数で動作するからだ。ワイヤレス機器に対する電子レンジの干渉は、深刻とはいえないまでも決して無視はできない。さらに厄介なことに、誘導熱と溶融硫黄の光が、通信とは無関係の干渉をこの帯域で発生させる。こうした干渉源も懸念材料だが、2.4GHz帯域の利用が許可されている用途は数え切れないほど多く、地域によっては接続の信頼性が徐々に低下してきている。その原因は、FCC(米国連邦通信委員会)やほかの規制団体が多くの通信方式を認可しているからだ。これらの通信方式の中には、Bluetoothに採用されているFHSS(frequency hopping spread spectrum)も含まれる。女優であり、通信技術の発明者でもあるHedy Lamarr氏は、自動演奏ピアノと並んで演奏しているときに、RF周波数ホッピングのアイデアを思いついた(写真1*6)。第二次世界大戦中、彼女は秘密の無線通信が戦争の勝利に貢献するであろうということに気付いた。そして、自動演奏ピアノが叩く鍵盤をなぞって彼女の指が同じ鍵盤を叩けたように、トランスミッタが違う周波数にホップすれば、それと同じパターンでレシーバもホップできるという概念を確立した。ここから、無線が盗聴されることなく互いに通信することができるというアイデアが生まれた。

 Bluetoothでは、2.4GHzのISM帯域で利用可能な83MHz内を1MHz幅で79チャンネルに分割する。Bluetooth対応機器は32あるこれらの周波数の間を、最大1600ホップ/秒の速度でホップする。並べられた2つのBluetooth対応機器が互いに干渉する可能性は、その時間のわずか1/79である。もしそうした状況になったときは、失われたパケットを再送するよう上位プロトコルがシステムに要求する。Bluetooth対応機器がZigBeeまたはWi-Fiの周波数にホップしてきた場合には、それらの機器にも干渉することになる。

 帯域幅に対する消費者の飽くなき要求は、11メガビット/秒のデータレートを実現するIEEE 802.11b規格を生み出した。この規格に準拠するシステムにはDSSS(direct sequence spread spectrum)方式が採用されており、83MHz〜2.4GHzのISM帯域のうちの22MHzを無線に使用する。この帯域での周波数は、PRBS(pseudorandom binary sequence)を位相変調する。FHSSとは異なり、DSSSは不連続の周波数にホップするのではなく、連続的にシフトする。DSSSを携帯電話に実装すれば、複数のトランスミッタを同じ帯域幅で使用できる。残念ながら、Wi-Fiに使用される11ビットのBarker符号はCDMA(code division multiple access)を利用するには不十分だが、上位プロトコルではCSMA(carrier sense multiple access)を実現している。この方式のトランスミッタは、チャンネルが空いて送信が可能になるのを別のトランスミッタが待っていることを検知する。IEEE 802.11bの帯域幅では、一度に使用できる機器の数はFCC規制国でわずかに3つ、欧州規格の規制国で4つである。最大数の機器が動作しているときには、Bluetooth、Wireless USB、コードレス電話、ZigBeeとの干渉が発生するだろう。

 Wireless USBは3GHz以上の周波数で動作する広帯域無線と定義できるが、米Cypress Semiconductor社も2.4GHzのISM帯域を使った独自のWireless USB規格を発表している。Bluetoothのように、この規格でも2.4GHz帯域を1MHz幅で79チャンネルに分割しているが、Cypress社は信号の変調にFHSSではなくDSSSを用いている。接続は79の帯域間をホップするのではなく、1つの帯域にとどまる。この方式の良いところは、周波数選択の機動性があることだ。つまり、ある周波数で良好な接続を確立できなかったり維持できなかったりした場合には、別の周波数にジャンプする。Wireless USBの開発者らは、この規格がHID(human interface device)の低データレートに合わせたケーブルに置き換わることを目標としていた。2.4GHzのZigBeeは、5MHzのスペースを空けてこの帯域を3MHz幅で16チャンネルに分割している。信号変調にはDSSSを利用し、16チャンネル間のホップは行わず、周波数選択の機動性も考慮されていない。コードレス電話機と小型モニターにも2.4GHzのISM帯域が使用されている。コードレス電話にはFHSSとDSSSのいずれかが使用されている場合がある。これらの機器は通常、2.4GHzを10〜20チャンネルに分割している。多くの電話機では、ノイズを避ける目的で操作チャンネルを選択できるようになっている。

脚注

※5…Burns, John, Richard Rudd, and Zoran Spasojevic, "Compatibility between radio communication & ISM systems in the 2.4GHz frequency band," Aegis Inc, June 24, 1999, http://www.ofcom.org.uk/static/archive/ra/topics/pmc/document/aegis2_4/ism_rep.doc

※6…Markey, Hedy, and George Antheil, Secret Communications System, Patent 2,292,387, August 1942,http://www.google.com/patents?id=R4BYAAAAEBAJ


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