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高輝度LED、さらなる用途拡大の決め手は何か(2/2 ページ)

» 2008年04月01日 00時00分 公開
[Margery Conner,EDN]
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AC電源による直接駆動

 今日提供されているほとんどのHB LEDの駆動には、DC電圧/電流を必要とする。照明設備が必要な場所では、通常はAC電源しか供給されていないので、ほとんどのSSLシステムではAC-DCコンバータが利用されている。それに対し、韓国Seoul Semiconductor社は、AC電源を直接利用できるHB LEDシリーズ「Acriche」を提供している(図1)。

 Acricheの入力電圧は100/110VACまたは220/230VACである。同シリーズの「AW3200」は100/110VAC用で、「AW3220」は220/230VAC用である。入力電圧は、外付け抵抗の値によって設定する。両製品の発光効率は59lm/Wで、DC電力を使うHB LEDには劣るが、かなり高い効率を達成している。

図1 SeoulSemiconductor社の「Acriche」 図1 SeoulSemiconductor社の「Acriche」 このHBLEDは電源としてAC電圧を利用できる。発光効率は59lm/W。

 Acricheのチップには、逆向きに接続されたLEDの組が形成されている。片方はAC電圧が正となる半周期にオンして電流を流す。もう一方は、残りの半周期に電流を流す。これにより、AC電圧の周期全体にわたって発光することになる。AC電源で直接駆動できるため、AC-DCコンバータは必要ない。システム全体で見ると回路が簡素化されるので、信頼性の向上と設計時間の短縮につながる。

医療機器での活用

 高効率と長寿命という明らかな利点以外にも、HB LEDは通常の照明以外の用途に適した魅力的な長所を備えている。例えば、光スペクトルの幅が狭いという特徴は、「高ビリルビン血症」という病気の治療に非常に適している。ビリルビンとは、正常な赤血球が破壊される際に、ヘモグロビンから生成される赤黄色の有機化合物である。通常、少量のビリルビンが生成されることには問題はない。しかし、これが過剰な量になると、黄疸などの症状を伴う高ビリルビン血症を発症する恐れがある。また、ビリルビンが多量に生成されると、それが脳組織に循環し、新生児の発作や脳障害の原因となることがある。

図2 高ビリルビン血症の治療器 図2 高ビリルビン血症の治療器 青色LEDを利用した米NatusMedical社製のゆりかご型治療システム。青色LEDは、幼児の高ビリルビン血症の治療に最も効果的な、波長が458〜462nmの青色光を出力する。

 このビリルビンは、青色光を吸収すると水溶性のものに分解されて体外へと排泄される。従って、高ビリルビン血症は、光線療法によって治療することができる。具体的には、波長が458〜462nmでスペクトル幅が狭い青色光が最も効果的である。

 以前は、高ビリルビン血症の治療用照明は、カスタム仕様の青色蛍光管とフィルタで構成されていた。しかし、蛍光灯の光のスペクトル幅は比較的広い。そのため、最適な波長で光を放射しても、ビリルビンが分解される効率が悪くなり、治療時間が長くなってしまうという問題があった。それに対し、青色LEDであれば、光エネルギをほとんど無駄にすることがない(図2)。また、蛍光灯による装置よりも安定しており、寿命が長く、安価である。将来、「衣服型照明」が開発されれば、従来のボックス型の治療装置よりもさらに効率的な治療が可能になるだろう。

パッケージの重要性

 HB LEDは、多種多様なパッケージで提供されている。顧客側の混乱を避けるために、「HB LEDのパッケージに関する規格がそのうち制定されるだろう」と考える人も多いはずだ。しかし、Cree社のビジネス開発担当ディレクタであるMark McClear氏は「少なくとも、この先5年間は制定されないだろう」と予測している。

 「HB LEDは、より明るく、より安く、より高効率にと進化を続ける。この進化の過程で、新たな用途が生まれていくはずだが、これら3つの軸の改善は、急速かつ同時に進んでいる。その中でパッケージは重要な要素となっている。他社の戦略はまた異なるだろうが、当社の場合、1種類のパッケージで製品を提供している。それは顧客を混乱させないためではなく、そのパッケージが貴重な光をより多く出力できるものであるからだ」とMcClear氏は語る。

目に対する安全性の問題

 米Avnet社のLightSpeed SSL/LEDビジネス部門担当ディレクタを務めるCary Eskow氏は、「HB LEDの急激な進歩により、設計者が見落としがちな問題が発生している。それは、目に対する安全性だ」と指摘している。同氏によれば、「HB LEDの進歩があまりにも急激で、安全性に配慮した注意深い設計が追いついていない」のだという。

 目に対する最もわかりやすい害は、強すぎる光の影響である。HB LED製品の中には、数百ルーメンの光量を達成するものがある。環境によっては、その光による熱的/化学的作用により、目が損傷する恐れがある。人間のまばたきは、このような損傷に対する保護機能としてはほとんど役に立たない。

 光によって網膜の温度が約10℃上昇すると、目に損傷が生じる。この損傷は、光を受ける部分の面積に依存する。つまり、皮膚の1点に集中して圧力を加えたほうが、指先で同じ力を加えるよりも痛く感じるのと同様に、光を受けた部分の面積が小さいほど損傷は大きくなる。光の色が緑(波長は約550nm)から黄、橙、赤、そして赤外へと波長が長くなるほど、この損傷の可能性は高くなる。

 一方、紫や青の強い光は、目に化学的な損傷を与える。青色光やそれよりも波長の短い光は、赤外線よりも1000倍も危険な場合がある。これに対しても、まばたきはほぼ無力である。

 Eskow氏は、「HB LEDは、医療から玩具まで、ますます多様な用途に利用されるようになるだろう。その過程で、設計者がHB LEDにおける第一の課題として安全性について考えるようになることを強く望む」と語った。

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