メディア

外部電源、その「高効率化」に待ったなし!規制強化の現状と、効率向上のポイントを探る(1/3 ページ)

電源アダプタなどの外部電源(EPS)が満たすべき、電力効率の規格制定が各国で進められている。ベンダーは、こうした要求を満たす製品を開発しなければ顧客を失ってしまう。結果として、EPSにおいても、より高度な変換方式を採用することが合理的な策となりつつある。本稿では、米国の任意規格「ENERGY STAR」をはじめとする各種規格の動向と、EPSの効率向上策について解説する。

» 2008年06月01日 00時00分 公開
[Margery Conner,EDN]

EPSにも求められる高効率化

 コードレス電話やノート型パソコンといった民生機器では、ACアダプタなどの電源が使われている。つい最近まで、こうした用途で用いられる電源は消費電力が非常に大きいものだと思われていた。消費者は、日常的に使っている機器で用いるアダプタとしては、正しい電圧と電流によって十分な電力を安価に供給してくれるのであれば、どのようなものでもかまわないと考えていたはずだ。実際、従来のアダプタは効率レベルが40〜50%と低く、かなりの電力を無駄にしていた。

 この電力値は、個々の消費者が気にするほどの量ではない。しかし、そのようなアダプタが米国だけで数百万個も存在することを考えると、発電所が余分に必要となるほどの電力が浪費されていることになる。

 このような背景から、ACアダプタなどの外部電源(EPS:external power supply)に関して、満たすべき電力効率を指標化する規格が次々と作られている。そうした規格は、推奨される指標を明示するのみで強制力は持たない任意規格と、必ず守らなければならない強制規格の2つに分けられる。本稿では、そうした規格の動向を中心に、EPSの設計が今後どのように進化するべきかなのかを展望してみる。

任意ながらも事実上の標準――ENERGY STAR

図1 ENERGYSTARの認証ラベル 図1 ENERGYSTARの認証ラベル ENERGYSTARに準拠するEPS製品に貼付される認証ラベル(銘板)の例。主要な電気製品に貼付されるラベルには、派手なENERGYSTAR準拠のロゴが使用されているが、EPSに貼付されるラベルはそれよりもずっと小さい。「III」はENERGYSTAREPSバージョン1.1、「IV」はENERGYSTAREPSバージョン2.0に準拠していることを表す。

 米国環境保護庁と米国エネルギ省(DOE:Department of Energy)が共同で推進する省電力プログラム「ENERGY STAR」は、温室効果ガスの排出量削減を目的として、エネルギ効率の高い製品を認定するための任意規格を提供している(別掲記事『ENERGY STARの狙い、その効果』を参照)。ENERGY STARは、1992年から家庭用電子機器に対する任意規格を定めている。同プログラムの最初の規格が対象としていたのは、コンピュータ機器のモニターや冷蔵庫など、比較的大型の機器であった。

 このENERGY STARが、2005年にACアダプタなどのEPS製品に対しても同様の任意規格「ENERGY STAR EPS Specification(以下、ENERGY STAR EPS)」を作成した(図1*1)。米Power Integrations社の製品マーケティングマネジャを務めるAndrew Smith氏によると、「ENERGY STARは非常に強力な制度となり、企業は半ば強制的にこれに従わなければならないような状況になっている」という。またENERGY STARは、米国の州ごとに定められている規格や、米国以外の国の規格の基本仕様にもなっている。

ENERGY STARの狙い、その効果

 米国における電力需要は、新たに増強される予定の発電能力に対し、2倍の速さで増加している。そのため、数年のうちに電力の供給問題が発生する恐れがある*2)。1990年代に規制緩和が行われる前は、連邦政府は電力会社に対し、「もっと発電所を建設するように」と命じるだけでよかった。現在では、消費者のエネルギ需要を削減するには、市場に対してそのことを強く奨励しなければならなくなっている。そのために制定されたのが、ENERGY STARプログラムである。

 電力網からのエネルギ価格のとどまることのない高騰など、国家の問題は市場の意識にかかっている。一般消費者に対しても、エネルギ消費量を削減してもらうよう働きかけることが重要である。ENERGY STARプログラムでは、効率の規定を満たす製品に、そのことを示すラベルを貼付することができる。それにより、意識の高い消費者に対して、その製品をアピールすることが可能になる。

 ENERGY STARプログラムの2007年状況報告書によると、2006年だけでも同プログラムのラベルを貼付した製品/機器の使用により、1194兆BTU(1BTUは約1055J)のエネルギ節減と、2110万t(トン)の二酸化炭素の排出防止につながったという*3)。また、同報告書は、EPSに対するENERGY STARラベル制度により、1700万米ドルに相当する2兆BTUのエネルギ節減が実現されたとしている。



脚注

※1…"ENERGY STAR Program Requirements for Single Voltage External Ac-Dc and Ac-Ac Power Supplies Eligibility Criteria," ENERGY STAR.

※2…Smith, Rebecca, "Electricity Demand Is Far Outpacing New-Supply Sources," The Wall Street Journal, Oct 17, 2007, p.A17.

※3…Sanchez, Marla, Carrie A Webber, Richard E Brown, and Gregory K Homan, "Savings Estimates for the ENERGY STAR Voluntary Labeling Program 2007 Status Report," Lawrence Berkeley National Laboratory, Environmental Energy Technologies Division, March 23, 2007.


       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.