10年ほど前のこと。筆者は4個入りフォトカプラーを用いた全波乗算型ブリッジ回路を考案した(図1)。この回路を使えばAC電源の有効電力W(ワット)は計測できたが、負荷にリアクタンス成分が含まれる場合の影響までは計測できなかった。この回路の動作原理は、ブリッジ回路を構成するLEDのコンダクタンスがLEDに流れる電流量に比例する現象を基にしている。LEDのコンダクタンスと電流の関係は、周囲温度が25℃である場合におよそ19mS(ミリシーメンス)/Aとなる。図において、フォトカプラーに流れる電流は、ACライン電圧と、0.001Ωのシャント抵抗によって負荷電流に比例して発生する電圧によって変調される。シャント抵抗用の銅材料の温度係数は約0.4%/℃であり、この特性によってLEDのコンダクタンスの温度変化の大半が補償される。
本稿で紹介するのは、図1の回路の改良版である(図2)。この回路では有効電力Wだけでなく、皮相電力VA(電圧のRMS値×電流のRMS値)も求めることができる。そのため、W/VAによって力率を推定することが可能である。
図2の回路の右半分は、図1の回路の半波ブリッジ回路に相当する。左半分も同様に半波ブリッジ回路であるが、ブリッジを構成するLEDの駆動は、右半分の回路のようにAC電圧で行うのではなく、ダイオードD5によって整流したDC電圧で行うように変更している。この結果、左半分の回路のLED(D4)において、平均電圧と負荷電流の瞬時値とがアナログ的に乗算され、その結果がフォトカプラー(Q4、D4)から出力される。この出力がオペアンプA2で増幅され、トランジスタQ5〜Q8によって整流されて、負荷の皮相電力VAに比例するアナログ電圧が出力される。
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