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D-Aコンバータで作るデジタル方式の分圧器Design Ideas

» 2008年10月01日 00時00分 公開
[John Wynne, Liam Riordan(Analog Devices),EDN]

 例えばAnalog Devices社の「AD5160」のようなデジタルポテンショメータを利用すれば、8ビット程度の分解能を備えたデジタル方式の分圧器を作ることができる。本稿では、より高い分解能を必要とする用途において、CMOSのD-Aコンバータを利用して分圧器を構成する方法を紹介する。

 減衰器の用途では、CMOSのR-2Rラダー型D-Aコンバータがよく使われる。そうした回路では、D-Aコンバータのオペアンプ回路を使って出力電流を電圧に変換する。D-Aコンバータに入力する基準電圧としては、オペアンプが所望の電圧を出力できるような値を用いる。

図1 本稿のアイデアの概念図 図1 本稿のアイデアの概念図 この簡単な回路は極性反転の問題がなく、単電源で動作する。D-Aコンバータはデジタルプログラマブル抵抗REFFとして機能し、分圧器が実現される。

 しかし、こうした回路を単純に構成すると、出力が逆極性となってしまう。そのため、通常は2種類の電源電圧を使用しつつ、極性が反転しないよう構成する必要がある。

 図1に示したのは、この極性の反転が発生せず、単電源で動作させることが可能な簡単な回路である。この構成では、D-Aコンバータはデジタル制御が可能なプログラマブル抵抗REFFとして動作する。D-Aコンバータへの入力コードに応じて、D-Aコンバータの基準電圧入力端子VREFと電流出力端子IOUT1との間の抵抗値が変化する。この構成により、D-Aコンバータを利用してデジタル制御が可能な分圧器が実現できていることになる。

図2 図1の概念を具体化した回路 図2 図1の概念を具体化した回路 図1の概念図を12ビットの電流出力型D-Aコンバータによって具体化し、分圧器を構成している。

 図2は、12ビットの電流出力型デュアルD-AコンバータIC1「AD5415」(Analog Devices社製)の2回路のうち1回路を使用して、上記のアイデアを具体化したものである。わかりやすくするために、この図ではD-Aコンバータの制御用配線を省略してある。

 オペアンプA1の出力には、D-AコンバータIC1の電流出力端子IOUT2Aが接続されている。この端子の電圧は、電流出力端子IOUT1Aの電圧に追従し、等しい値となる。図のような構成をとることにより、D-Aコンバータ内部のスイッチに生じるゲート‐ソース間電圧の差やD-Aコンバータの直線性の低下が改善される。

 抵抗RFBとR1は、D-Aコンバータの抵抗ラダーのインピーダンスRと等しい値になるよう構成する。そうすることで、この回路により以下の式で表される変換が行われる。

 ここでREFFはD-Aコンバータ内部の抵抗の値である。D-Aコンバータの分解能(ビット数)をn、デジタル入力の2進コードをNとすると、REFFの値はR(2n)/Nとなる。D-Aコンバータにおけるゲインの誤差がゼロであると仮定すれば、12ビットのD-Aコンバータの場合、上記の式は以下のように整理することができる。

 入力コードがオールゼロのとき、抵抗ラダーのすべてのスイッチがオフとなる。このとき、基準電圧入力端子VREFと電流出力端子IOUT1Aとの間の実効インピーダンスは無限大で、出力電圧は0Vとなる。出力電圧はコードの増加に伴って直線的に増加し、入力コードがオール1のとき、基準電圧VINの約半分の電圧になる。

 この種のD-Aコンバータでは、内部のnチャンネルCMOSスイッチの閾(しきい)値電圧によって出力電圧の最大値が制限される。スイッチを動作させるためにはゲート電圧が必要であり、また電流出力端子IOUT1Aの電圧が上がるということは、ソース電圧が上昇するということを意味する。この電圧の上昇によってスイッチのオン抵抗が大きく変化し、分圧器としての機能が低下する。従って、適切に動作させるためには、電源電圧は最大出力電圧、すなわち基準電圧の半分より数ボルト高くしなければならない。AD5415を利用する場合、電源電圧が5Vであれば、およそ3.33Vの出力電圧まで直線的に動作する。もし、より高い電圧の出力が必要なら、AD5415の代わりに15V電源用の製品である「AD7541A」(Analog Devices社製)を使うとよい。その場合、出力電圧範囲をおよそ7Vまで広げることができる。

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