クワッドタイプのNANDゲートICを最大限に活用し、排水用途などに用いられる各種ポンプの運転を制御する回路を紹介する。ここで対象とするのは、地下室に水があふれるのを防止したり、タンク内の水位レベルを制限したりするために使用される排水ポンプの制御である。
図1に、本稿で紹介する制御回路を示した。タンク内の水位が上限または下限のレベルに達したら、それぞれセンサーL2、L1から12V(論理レベルのハイに相当)の信号が出力される。水位が上限レベルに達するとポンプがオンになり、排水が行われる。そして、水位が下限レベルまで低下するとポンプはオフになる。ここで、上下限のレベルの差は、ポンプの運転/停止サイクルが短くなり過ぎないよう適当な幅に設定する。
タンクが空の場合には、水位は上限、下限のいずれにも達していない。そのため、センサーL1とL2の出力がローレベルになり、NANDゲートBとAの出力レベルがハイになる。その結果、NANDゲートDの出力がローになる。水位が上がり下限を超えると、L1の出力はハイになるが、各ゲートの出力レベルは変わらない。さらに水位が上がって上限に達し、L2からハイの信号が出力されると、ゲートAの出力がローに変化し、それに伴ってゲートDの出力がハイになる。その結果、ゲートBの出力がローにラッチされる。それにより、SSR(Solid State Relay:半導体リレー)の−側端子がプルダウンされ、排水ポンプがオンになる*1)。同時に、ゲートDのハイレベルの出力によってゲートCを用いた発振回路が動作し、その出力により圧電ブザーが鳴動する。
水位がL2のレベルより低くなった場合にも、ポンプは、ゲートBとDの出力がラッチされていることからオンに保持される。水位がL1のレベルよりも低くなると、ゲートBの出力がハイになってポンプの動作が停止する。ポンプの停止信号により、ゲートDの出力がローに変化することから、発振回路が停止し、圧電ブザーの鳴動も停止する。
この回路では、低速信号を基に矩形波出力が得られるようシュミットトリガー入力のNANDゲート「HCF4093B」を使用している。また、入力抵抗R1、R2の値は560kΩとした。
SSRとしては、バックツーバックに接続されたSCR(Silicon Controlled Rectifiers:シリコン制御整流素子)を利用したものを選んだ。このタイプの製品には、ランダムなターンオン特性やモーターの負荷に対応するためのスナバー回路を備えているものもある*2)。SSRとしては、定格電圧が回路の動作電圧の2倍以上あり、定格電流が瞬時のサージ電流に耐えられるようモーターの定格電流の5〜10倍ほど確保できるようなものを選択する。モーターの定格が異なれば、それに対応可能なSSRを選ぶ必要がある。また、ヒューズについては、I2t定格(Iは電流、tは電流の流れる時間幅)がSSRの定格以下である速断タイプまたは半導体タイプのものを使用しなければならない。
この回路では、水位センサーの材料として保護被覆付きの太い単銅線の先端部を裸にしたものを使用した。このセンサーの線は磁器製コネクタに接続し、それを外装箱に取り付けてタンクの上部に設置した。このとき、両センサーの位置より水位が下になった際、水分が付着していても、センサー線の間での干渉が発生しにくくなるように配慮しなければならない。
また、センサーのほかの材料として、高導電率/耐腐食性のものを使用することもできるが、その場合、センサーの形状に合わせて配置を工夫する必要がある。なお、12Vの電源には絶縁型のものを使用する。
図2の回路は、図1の回路を少し変更したものである。この回路は、タンク内の水または導電性の液体のレベルを一定に保とうとする場合に利用可能だ。タンク内のセンサーL1とL2は、図1と同様に配置する。電源を投入するとポンプが始動し、タンク内に液体が送り込まれる。そして、液面がL2のレベルまで達するとポンプは停止する。その後、液面がL1のレベルに低下するまでポンプは停止したままとなる。レベルがL1より低くなるとポンプが再始動し、液面がL2に達するまでタンク内に液体を送り込む。圧電ブザーはポンプが運転中であることを知らせる役割を果たす。
なお、3相モーターをコントロールしたい場合には、SSRを3相型のものにするか、あるいは適切な定格の単相型SSRを追加すればよい。後者の方法の場合、2個のSSRの入力を直列に接続する。
※1…"Solid-state relay applications," Western Reserve Controls
※2…"Single-phase SSRs," ERI Solid State Relays, 2007
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