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LXI/PXI がもたらすメリット計測器向けの通信規格(1/3 ページ)

パソコンや複数の計測器(計測モジュール)によって構成される計測システムでは、標準化された通信規格が必要になる。その代表となっているのが、LXIとPXIの両規格である。現在、それぞれの規格に準拠した計測器が、徐々に普及しつつある。本稿では、LXI、PXIそれぞれの特徴を説明した上で、両規格の推進団体が2009年に行った取り組みについてまとめる。また、それぞれの規格がどのような計測用途に適しているのかといったことも紹介する。

» 2010年03月01日 00時10分 公開
[Rick Nelson,EDN]

計測器の相互通信機能

 通信機器をはじめ、最新の機能を持つ機器向けに複雑な設計を行う場合、相互に通信することのできる計測器が必要になることが多い。例えば、プロトタイプを用いた試作評価を行う際には、信号源とアナライザの同期をとる必要がある。また、大量の特性データを収集するために自動計測を行うことも多い。

 このような用途に向けて、計測器はかなり以前から、コンピュータやほかの計測器と相互に通信する機能を備えるようになっている。相互通信の機能が最初に登場したのは1960年代の終盤、HP-IB(Hewlett-Packardインターフェースバス)が考案されたときのことである。HP-IBは、後にIEEE-488規格として標準化され、GPIB(汎用インターフェースバス)という名称になった。

 これ以降、計測器は、コンピュータを中心とする汎用インターフェースと組み合わせて使用されてきた。しかし、これらのインターフェースには制約がある。GPIBケーブルは大きく高価で、データ転送速度に限界がある。USBは、ケーブルが入手しやすく安価だが、計測器専用の機能を持っていない。加えて、1つのコンピュータに接続される数台の計測器としか通信することができない。

2つの新たな通信規格

表1LXIコンソーシアムおよびPXI Systemsアライアンスの主な参加企業 表1 LXIコンソーシアムおよびPXI Systemsアライアンスの主な参加企業 注1)この表には、本稿に登場した企業に加え、LXIコンソーシアムの戦略/参加/アドバイザリの各メンバー、PXI Systemsアライアンスのスポンサメンバーおよびエグゼクティブメンバーを掲載している。特に記載のない限り、それぞれの団体のインフォメーショナルメンバーまたはアソシエートメンバーは含まれていない。ピンク色で示した企業は、両方の団体に参加するか、両方の規格に関心を表明している。詳細については、http://www.lxistandard.orgおよびhttp://www.pxisa.orgを参照のこと。注2)A:PXI Systemsアライアンスのアソシエートメンバー、I:LXIコンソーシアムのインフォメーショナルメンバー、O:Tektronix社はNI社と共同でPXIオシロスコープを開発している。同オシロスコープは、Tektronix社の技術を採用し、NI社が販売を行う。
写真1Rohde&Schwarz社のベクトルネットワークアナライザ「R&SZVA67」 写真1 Rohde&Schwarz社のベクトルネットワークアナライザ「R&SZVA67」 

 LXI(Local Area Network Extensions for Instrumentation)とPXI(PCI Extensions for Instrumentation)は、計測器向けの標準化された通信規格である。これらの規格は、上述したような制約から解き放ってくれる。LXI規格はLXIコンソーシアムが、PXI規格はPXI Systemsアライアンスが、それぞれ規格化を推進している。

 両団体は、2009年夏から秋にかけて開催されたさまざまなイベントで、自団体の規格の機能や利点を主張した。どちらかの規格に準拠した計測器でも、両方の機能を備えるハイブリッド型の計測器/計測システムでも、開発現場に自動計測機能をもたらしてくれる。ただし、どちらの規格を利用したとしても、すべての計測用途に対応できる単一の計測器は存在しない。このため、計測器ベンダーは、両規格の調査を行うとともに、自社の製品で両規格とも採用したりしている(表1)。

 もし、マイクロ波の周波数領域を計測の対象とするならば、LXI規格に準拠した計測器、もしくはそれを含む計測システムが必要になるだろう。PXI規格については、米Phase Matrix社が26.5GHzまでの周波数に対応するダウンコンバータ「PXI-1420」を、英Pickering Interfaces社がPXI規格に準拠するマイクロ波スイッチを提供している。しかし、PXI Systemsアライアンスの主要メンバーである米Aeroflex社と米National Instruments(以下、NI)社の製品を例にとると、PXI規格に準拠する汎用のRF信号源や受信機は、それぞれ6GHzと6.6GHzまでの周波数にしか対応していない。

 PXI規格に準拠するRFモジュールのメーカーは、帯域幅を増大することよりも、新しい技術をサポートすることに重点を置いて開発を行っている。例えば、Aeroflex社は、同社のPXIベースのシステムについて、LTE(Long Term Evolution)に関する新たな計測機能を発表している。

 LXI規格の特徴として挙げられるのが、現状、多くのベンチトップ型の計測器が同規格に準拠していることである。例えば、ドイツRohde&Schwarz社のベクトルネットワークアナライザ「R&S ZVA67」は、10MHz〜67GHzの周波数領域に対応し、LXI規格のクラスCに準拠している(写真1)。また、遠隔操作や、長距離にわたる計測に対応しなければならない場合には、LXI規格を選択するほうがよいことが実証されている。信号源と受信機を数百m離して行うレーダーの範囲計測などは、LXI規格に準拠する計測器であれば簡単に計測することができる*1)

 一方、PXI規格の特徴は、LANの問題に対処したり、IT(情報技術)部門を巻き込んだりすることなく、大規模な計測システムを簡単に構成できる点にある。PXI規格では、1つの筐体に組み込まれる計測モジュール間においてクロックを同期する機能を標準でサポートする。LXI規格でも、クラスAおよびクラスBの計測器であれば、このクロック同期の機能に対応する。しかし、RF波やマイクロ波の領域に対応する計測器の多くは、より一般的な規格であるクラスCに準拠しており、同規格ではクロック同期の機能をサポートしていない。また、PXI規格は、計測データを保存したり解析したりするために計測器外部へとストリーミングする機能も定義している。


脚注

※1…Nelson, Rick, "LXI speeds gigahertz measurements," Test & Measurement World, November 2007, p.49, http://www.tmworld.com/article/322745-LXI_speeds_gigahertz_measurements.php


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