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POLコンバータ選択の指針ハイエンドLSIの電源が満たすべき要件(1/4 ページ)

機器設計者にとっては、日々進化を続けるLSIの高いパフォーマンスを、いかに最大限に引き出すかということが課題となっている。そのための第一歩として重要になるのが、LSIの動作電圧供給に用いる電源の選択と設計である。本稿では、ハイエンドLSIの電力供給に使われるPOLコンバータは、どのような条件を満たしていなければならないのかを説明する。

» 2011年03月01日 00時00分 公開
[石川 隆之 (ベルニクス)/福田 光治(PALTEK),EDN]

ハイエンドLSIが抱える課題

 半導体製造プロセスの技術の進化によって、LSIの集積度や集積されるロジック回路の性能は格段に高まった。しかし、その結果、LSIに動作電圧を供給する電源に対しては、供給電圧の精度、安定度、電流容量の点で格段に要求が厳しくなっている。また微細化が進んだことにより、LSIの内部回路を駆動するコア電圧の低電圧化が進み、LSIの電源管理もより複雑なものとなってきた。特に40nm/65nmといった最新プロセスで製造されるCPU、DSP、 FPGAなど、集積度や処理の規模が大きく、消費電力の多いデバイス(以下、ハイエンドLSI)では、こうした傾向が顕著になっている。

 このような状況は、ハイエンドLSIを活用するための電源回路の設計と、その電源に用いる製品の選択を複雑にし、設計者を苦しめる要因となっている。数 mVレベルでの電圧管理は、基板のレイアウト技術や製造技術のみによる対策では不十分であり、電源製品(モジュールやコントローラICなど)自体の特徴や特性を生かした設計が必要となっている。また、電源はアナログ回路なので、使用する個々の製品の性能をうまく引き出すことが不可欠となる。

 ディープサブミクロンプロセスでは、世代が1つ進むことにより、スタンバイ時のリーク電流が約10倍から1000倍程度まで増加すると言われている。リーク電流は、CMOSトランジスタにおいて微細化が悪い方向に働く端的な例であり、最新プロセスで製造するすべてのLSIで考慮が必要な問題だと言える。また、LSIのダイナミック消費電力は電源電圧の2乗に比例し、動作周波数にも比例して増加する。このような背景からも、電源電圧の精度に対する要求が高まり、本来期待したLSIのパフォーマンスを得るためには、電源の選択が1つの重要なポイントとなる。

 ハイエンドLSIとそれを用いるシステムの要求を実現するために必要な、電源電圧の精度、安定度、消費電力への対策やシーケンス管理などの問題を解決するためには、電源に用いる製品自体の性能を見極め、またその性能を最大限に引き出して設計に適用する必要がある。しかしながら、電源に対する要求が厳しくなるほど、これを実現するのは難しくなってきている。

POLコンバータとは?

図1 ドロッパ方式のレギュレータの動作原理 図1 ドロッパ方式のレギュレータの動作原理 
図2 スイッチング方式のレギュレータ回路 図2 スイッチング方式のレギュレータ回路 
図3 スイッチング方式のレギュレータの動作 図3 スイッチング方式のレギュレータの動作 

 LSIの電源としては、上述したような要求を満たしたものを選定する必要がある。ただ、ひと言で電源といってもいくつかの種類があるので、ここでは、まず電源の回路方式からおさらいしてみることにする。

 電源の回路方式は、大きくドロッパ方式とスイッチング方式の2つに分けることができる。ドロッパ方式は、いわゆる3端子レギュレータなどで用いられているものだ。図1に示したのが、その動作原理である。負荷と直列に可変抵抗を配置し、この可変抵抗で電圧を降下させることで出力電圧を調整/安定化させるという仕組みだ。実際の回路では、可変抵抗としてトランジスタを利用することになる。ドロッパ方式の特徴は、スイッチング方式に比べるとノイズの発生がなく、高い安定度の出力が得られることである。しかし、入出力の電圧差×出力電流に相当する分が損失となるため、大電力の用途には適していない。

 一方、スイッチング方式のレギュレータは、図2に示すような回路構成となる。半導体素子Q1のスイッチング動作によって出力パルス幅を制御し、その後LC(コイル、コンデンサ)フィルタによって平滑化する。これにより、一定の出力電圧を得るというものである(図3)。

 この方式では、スイッチがオンした際、オフした際ともに電力損失が極めて小さい。損失としては、そのほかにスイッチング損失があるが、ドロッパ方式のレギュレータに比べるとはるかに高い効率を実現可能だ。また最近の製品では、転流用ダイオードD1をMOSFETに置き換えた同期整流方式の回路とすることで、さらに高い効率を得ているものもある。なお、スイッチング方式では、スイッチングに伴うスパイクノイズが発生する。また、スイッチング周波数に依存したリップルが発生することも欠点となり得る(後述)。

 CPU、DSP、FPGAなど、集積度や処理の規模が大きく、消費電力の多いハイエンドLSIについては、基板上において、そのLSI専用の電源を用意するケースが増えてきた。上述したように、大電力の用途にはドロッパ方式の電源は適していない。そのため、この用途では、通常はスイッチング方式のものが用いられる。このような大電力のLSI専用の電源回路が、本稿のテーマであるPOL(Point of Load)コンバータだ。POLコンバータの場合、スイッチング方式の中でも、主に降圧型のものが使用される。

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