PLCに関連するインピーダンスは、伝送路である電力線のインピーダンスと、電力線に接続しているノード(PLCノード)のインピーダンスに分けることができる。ここで問題になるのは、電力を使用する機器を電源ソケットに挿入する度に変化を起こす電力線のインピーダンスである。
電力線のインピーダンス変動により、PLCノードのインピーダンスとの差が大きくなるほど、通信に利用できる信号電力は小さくなる。つまり、電力線とPLCノードのインピーダンス整合を実現できないことにより、PLCの通信性能が低下してしまうのだ。
電力線のインピーダンス変動に対する対策は、PLCの大きな課題の1つである。PLCにおいて高い通信性能を確保するためには、電力線のインピーダンス変動を予測して、PLCノードのインピーダンスを電力線のインピーダンスと動的に一致させる必要がある。
PLCの信頼性に最も大きく影響する要素は、強固でエラーの少ない通信プロトコルを採用するか否かということであろう。PLCを用いる通信システム(PLCシステム)が、ノイズや電力線のインピーダンスなどといった物理的要素に関する制御手段を十分に持っていない場合でも、PLCに最適化された通信プロトコルを採用することにより通信性能を大幅に改善することができる。通信プロトコルの選択は、PLCシステムの成否を左右すると言っても過言ではない。適切な通信プロトコルを用いることにより、通信を100%成功させることができるPLCシステムを実現することも可能である。
ほとんどのPLCシステムが、同じ電力線に接続された数十から数百のPLCノードを制御することを想定していると仮定しよう。通信プロトコルは、すべての PLCノードが電力線上で利用可能な帯域を公平に共有することができ、あるノードがある通信チャンネルを独占的に使用することがないようにノード間の調停を行う。通信プロトコルの種類とその実装手法によって、利用できるPLCノードの最大数が決定される。
一般的に、通信プロトコルは、確認応答、再送信およびCRCによるエラー検出機能を備えている。ただ、PLCシステム上で動作するアプリケーションでは、これらの機能について意識する必要はない。アプリケーションの視点から見れば、正しいPLCデータを受信できさえすればよいからだ。PLC用のICには、既存の通信プロトコルを処理する機能があらかじめ組み込まれているものもあれば、設計者自身が通信プロトコルの定義、コーディング、管理を行わなければならないものもある。また、PLC用ICが通信プロトコルに関する機能を備えていない場合、設計者は通信プロトコルを処理できるプロセッサを別に用意する必要がある。
通信プロトコルを選択する際には、同一の電力線上において、異なるメーカーのPLCノードが共存できるか否かについても検討すべきだろう。例えば、 CENELECは、アクセス方式がCSMA(Carrier Sense Multiple Access)の通信プロトコルを規定している。この通信プロトコルでは、異なるメーカーのPLCノードが同一の電力線上で共存できることを保証している(図4)。PLC用ICについても、異なる半導体メーカーのICを用いたPLCノードを同一の電力線上で共存できるようにすることは、PLC機器市場の成長と将来の本格的な導入において重要な役割を果たすだろう。
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