メディア

パワエレエンジニアの手作り電気自動車3年にわたるプロジェクトの成果を公開!(1/3 ページ)

急騰するガソリン価格に不満を募らせていたパワーエレクトロニクスのベテランエンジニアが、独自の電気自動車作りを決意した。それが3年間にわたるこのプロジェクトの始まりだった。

» 2011年12月13日 15時23分 公開
[Stephen Taranovich,EDN]

ポンティアック・フィエロがベース

 電気自動車(EV)とハイブリッド自動車(HEV)の進歩は速い。ハイブリッド車で売り上げトップを誇るトヨタ自動車の「プリウス」に、市街地走行モードで17.3km/リットルの燃費を達成したFord Motorの「Ford Fusion hybrid(フォード・フュージョン・ハイブリッド)」、EVモードにおいてフル充電で56kmの走行が可能なGeneral Motorsの「Chevrolet Volt(シボレー・ボルト)」、そして5人乗りで世界初の本格的な量産電気自動車となった日産自動車の「リーフ」など、枚挙にいとまが無い。


図1 Santini氏が製作した電気自動車 図1 Santini氏が製作した電気自動車 

 しかし本稿の主役は、これらとは別の電気自動車だ。1988年製「Pontiac Fiero(ポンティアック・フィエロ)」をベース車両にした、“手作り”電気自動車である(図1)。ただし実際のところ、ベース車両からこの電気自動車に流用されたのは、フロントサスペンションとステアリングだけだった。

 この手作り電気自動車のプロジェクトに取り組んだのは、米国のTDI Powerでエンジニアリング担当のバイスプレジデントを務めるJohn Santini(ジョン・サンティーニ)氏だ。同社はニュージャージー州ハケッツタウンを拠点とする電源製品のベンダーで、創立から50年以上を数える老舗企業である。モバイル機器やハイブリッド車、電気自動車など向けの電源装置を25年以上にわたって供給してきた実績を持つ。

HEVへの拡張性を残したEVが完成

 急騰するガソリン価格に不満を募らせていた同氏は、自身の創造力と問題解決能力を駆使して独自の電気自動車作りを決意した。それがプロジェクトの始まりだった。

 Santini氏は当初、プラグインハイブリッド車を作る計画を立てていた。ところがリチウムイオン電池の価格はどんどん下がっていく。そこで同氏はプロジェクトの途中で次のように決断した。エンジンと発電機を積み込む計画は後回しにして、リチウムイオン電池の積載量を増やしたのである。

 その結果、出来上がった車両はエンジンを搭載しない純粋な電気自動車となった。とはいえ、将来的にエンジンと発電機を搭載できるようなスペースも残されている。フル充電からの走行距離である144kmに加えて、今後エンジンと発電機を搭載してハイブリッド化すれば、走行距離を大幅に延ばせるだろう。車両の総重量は電池込みで930kgである。

ロータス・セブンのレプリカに学ぶ

 今回のプロジェクトで製作したのは、軽量タイプの2人乗りコミュータカーである。

 フレームには立体骨組構法を採用した。これは、小型・軽量スポーツカーの代名詞「Lotus Seven(ロータス・セブン)」の手作りレプリカである「Locost」や、似たような構造の車両を参考にしている。また、米国のCornell University(コーネル大学)が1975年に作った電気自動車からもインスピレーションを得た。

 車両のボディは、このフレームを包み込むように設計した独自のものだ。2.54cm厚の発泡スチロールの上に、0.2mm厚のガラス布基材エポキシを1〜3層にわたってかぶせてある。

 この車両は、構造的には三輪車と同じだ。後輪は2つの車輪を備え、その中央に駆動ベルトを据えた一体組み立て品である。このベルト駆動の機構そのものは99%以上の効率を得られるが、トランスミッションを組み合わせると、シンプルな2段変速タイプでも最大10%度は損失が生じてしまう。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.