搭載する二次電池は当初、鉛電池を使っており、その重量は363kgだった。しかし、3年にわたるプロジェクトの期間中にリチウムイオン電池の価格は半減し、サイクル寿命は2倍に伸びた。そこで最終的には、中国のThunder Sky Energy Group製の新型リチウムイオン電池を採用した。電池パックの総重量は159kg。30個の電池セルを組み合わせており、出力は100V、電流容量は200Ah(電力容量は20kWh)。フル充電からおよそ144kmの走行が可能だ(図6)。
現時点ではセルバランス回路は組み込んでいない。電池がまだ新しいのでうまくバランスが取れているものの、今後、改善を施すことになるだろう。
ここで鉛電池とリチウムイオン電池それぞれのメリットとデメリットを確認しておこう。図7に、各種二次電池の質量エネルギー密度と体積エネルギー密度の比較を示した。図8と図9は、それぞれ鉛電池とリチウムイオン電池の放電カーブである。
・鉛電池
・リチウムイオン電池
皆さんにこの電気自動車の乗り心地を伝え、ガソリン車との違いを説明するため、筆者はSantini氏の許可を得て試乗した。キーで始動する際、ガソリンエンジン車ではスタータで発生するクランク音が聞こえるが、この電気自動車は静寂そのものだった。ダッシュボードの照明が点灯し、メーターが動作することで、自動車が始動したことが分かる。
いよいよ駐車位置から車を出す。ギアをバックに入れた。シフトレバーは車両の中央部に設けられている。私たちが乗り慣れている自動車で一般的な位置なので、違和感は無い。実際のところSantini氏によれば、運転者の習慣に合わせてこの配置を採用したという。
当初は、シフトレバーの機能を果たすトグルスイッチか何かを、ダッシュボードに取り付けるつもりだったと同氏は振り返る。この電気自動車では、シフトレバーを介したACモーターの制御は、単にモーターを反転させるだけでしかない。技術的には、操作インタフェースの位置や形状を一般的なガソリン車に合わせる必要は無かった。それに、この電気自動車にはトランスミッションも無い。
ACモーターによるベルト駆動なので、運転中に聞こえるのは駆動ベルトが奏でるすすり泣きの音だけだ。だが、高速になるとその音は消え去る。最高速度は112km/hだ。
Santini氏の助言で、コーナーを減速せずに64km/h強で回ったが、とても安定していた。車両前部に収めた電池の重量によって、接地面に対して十分なトラクションが得られている。
車両を停止させる際のブレーキ操作については、アクセルペダルから足を離すだけで十分な制動力が得られる。これは、油圧ブレーキが必要なガソリンエンジン車とは異なるので、慣れるのに少し時間が必要だ。筆者の場合は3、4回のブレーキ操作で慣れることができた。
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