このダイオードをアンプに組み合わせる使い方として代表的なのは、回路の安全を確保するための保護用途です。アンプの回路では、入力に電源電圧を超える過大な電圧がかかる場合が多く考えられます。
例えば、図2を見てください。例1のように電源系統が異なる2個のアンプが直列に接続されており、送り側アンプの電源電圧が受け側アンプの電源電圧より高い場合、送り側アンプの入力の状態によっては、受け側アンプにその電源電圧よりも振幅が大きな信号が印加されてしまう危険性があります。電源電圧をオン/オフする際に、送り側アンプの電源の方が先に立ちあがり、まだ電源が供給されていない受け手側アンプに一瞬、高い電圧がかかってしまうかもしれません。
たとえそうでなくても、アンプの中には電源の投入時に一瞬、出力が正負どちらかの電源電圧まで振れてしまうものもあります(この特性は、アンプの種類によって異なります)。アンプの入力がコネクタを介して外部につながっていたり、アナログスイッチ経由で前段から駆動していたりする場合、アンプの入力が開放状態になることもありますが、その際にもアンプの出力は、バイアス電流のためにやはり正負どちらかの電源電圧いっぱいまで振り切ります。
受け側がアンプでなくても、例2のように、正の単電源で動作するA-D変換器の前段に正負両電源駆動のアンプが接続されている場合も危険です。アンプの出力が負の電源電圧まで振り切れた場合、A-D変換器の最大定格を超えてしまう可能性があります。オペアンプの中には、過大な入力が加わると出力の位相が突然反転し、出力が振り切れてしまうものがあります。これを位相反転と呼び、やはり次段の回路に悪影響を与える場合があります。
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