それではダイオードを使った保護回路の具体的な構成方法に進みましょう。図3は、前段のアンプの出力(後段のアンプの入力)をある電圧でクリップする(抑える)保護回路です。
例えば図2の例1にダイオードを使った保護回路を取り入れるとこうなります。すなわち、前段のアンプ1の出力が正電圧側に大きく振れて[後段のアンプ2の正電源電圧]+[ダイオードのVF]を超えると、ダイオードが導通し、その過電圧による電流は抵抗Rを通ってアンプ2の電源へ抜けてしまいます。従ってアンプ2の入力は、この正電源電圧をVF以上超えることはありません。負側も同じです。アンプ2の入力に印加される電圧は、[アンプ2の電源電圧±VF以内]の範囲に抑えられます。この例では、正電圧側が[+5V+VF]、負電圧側が[−5V−VF]に制限される計算です。
ショットキーダイオードは比較的VFが低いので、高い保護効果が得られます。Rにはアンプ1の出力電流が流れるので、抵抗値が小さ過ぎるとアンプ1の出力が短絡状態に近くなってしまい、良くありません。オームの法則を使って適切な抵抗値を計算し、無理のない電流値に抑えられるようにしてください。
図3の例3に示したように、外部からの接続(例えばコネクタを介して外部から信号を取り込む場合)によって流れ込む過電圧からアンプの入力を保護する目的でも、ダイオードを使うことができます。完璧な保護は不可能ですが、かなり効果があります。
この保護回路は、広く使われており実績もあるものですが、利用する際には注意すべき点もあります。この保護回路をアンプの入力に接続すると、Rの抵抗値とアンプの入力容量Cin、それに並列につながるダイオードの接合容量Cjによってポールが生じてしまい、ローパスフィルタとして機能してしまうのです。そのカットオフ周波数(フィルタで信号が減衰し始める周波数)は、C=Cin+Cjとして、1/(2π×R×C)で表わせます。高速信号を扱うアプリケーションでは、特に注意してください。
ダイオードやトランジスタの接合容量は、電圧に応じて変化するので、AC信号に歪みを加えます(図4参照)。またダイオードにはわずかとはいえ漏れ電流がある(図1参照)ので、逆方向電圧の場合でも電流が漏れてしまいます。高インピーダンスの回路や、高精度の電流−電圧変換器などのアプリケーションでは、これに十分配慮してください。場合によっては、ダイオードを利用した保護回路は使えないこともあります。
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