次に、液晶/有機EL/プラズマディスプレイの各構造について説明します(画像3を参照してください)。
有機ELは、電極と電極の間に有機材料が膜状に積層されたシンプルかつ薄い構造となっています(膜厚は約0.1μm)。一方、液晶は電極と電極の間に液体の材料(液晶分子)を挟んだ構造で、有機ELよりも膜厚が大きく、液晶分子が動く空間をある一定の厚さで保持する必要があります。プラズマディスプレイは、ガスを封入したセルに高エネルギーの電気を放電(プラズマ放電)させることで発生した紫外線がセル内側の蛍光体に当たることで光るという発光原理から、ガスがガラス基板上とある一定の距離で保持するように、中空構造を取っています。
つまり、一定の膜厚や中空構造などが必要ないシンプルな構造の有機ELは、薄型化はもちろん大型化や低コスト化にも有利ということだね。
じゃあ、どうして大型の有機ELディスプレイが出てきてないの?
それはね、次に挙げる3つの課題があるからだよ。
(1)大型パネルの製造技術確立
従来のメタルマスク蒸着方式以外に製造プロセスが確立していない。メタルマスク蒸着方式では大型化における均一成膜技術に課題が多い(工程数が多い/大型の真空蒸着設備が必要/材料利用効率が悪い/加圧や熱によるマスク変形)
(2)大型有機ELディスプレイに適した有機材料の開発
最低で1万時間以上の寿命を持つ材料が求められる
(3)液晶パネルと同等以下の生産コストの確立
高精細なディスプレイを作成するにはバックプレーンに低温ポリシリコンが必要となるが、現在、大型液晶の製造ラインはほとんどがアモルファスシリコン(液晶は電圧のスイッチング素子があれば良く、電流があまりいらないのでアモルファスシリコンを使用している)のため、大型ディスプレイ用の低温ポリシリコン製造ラインが確立されていない。よって製造コストが高くなってしまう
有機ELディスプレイは、性能も高くて期待も大きい。けれども、やはり先行するプラズマや液晶と比べてものづくりの技術、安定供給する量産技術が確立されていないというのが現状なんだ。また、本来は大型化が得意な構造を持っているにもかかわらず、現実的に大型化の作り方が絞られてきていないという課題もある。
有機ELディスプレイって作り方がいくつもあるの?
そうだね。材料、製造方法ともにいくつか種類があって、組み合わせも複数ある。
有機材料は、大きく分けて低分子材料と高分子材料があり、製造方法は、マスク蒸着でRGBを塗り分ける「マスク蒸着方式」と、インクジェット方式でRGBを塗り分ける「インクジェット方式」があります。現在の主流は低分子材料を用いたマスク蒸着方式のもので、ソニーのXEL-1もこの方式で作られています。
一般的に、低分子材料にはマスク蒸着方式が向いているといわれています。ただしマスク蒸着方式は製造工程で熱を加えているため、大型化するとマスクがゆがんでしまい、結果として大型のディスプレイが作れないという欠点があります。一方、高分子材料にはインクジェット方式が向いており、今後有機材料の寿命が伸びれば、大型化ディスプレイの製造も可能だとして期待されています。
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