今回は、前回に紹介した“あえてチェンジニアになる”というお話に続いて、やはりアプリケーションノートの活用方法に焦点を当てます。そして、この技術資料から“豆”知識をいかに吸い取るかについてお話しします。そう、豆は節分で鬼を追い払うだけじゃなく、エンジニアの仕事でも武器になるんです!
2月3日は節分です。鬼は〜外! 福は〜内! 豆を投げて鬼を追い払いましょう! 赤鬼、青鬼、そしてあなたの周りにいるかもしれない鬼軍曹や酒呑童子も……みんな追い払って心をスッキリさせましょう。すがすがしい気分で仕事に取り組めるのは気持ちがいいものですよね。
さて皆さん、その“豆”ですが、しっかり仕事にも使っていますか? そう、技術の“豆”知識です。エンジニアに求められる能力として創造性や応用性などが重視されていますが、それ以外に「博識であること」も軽視できないと思います。
今回は、前回に紹介した“あえてチェンジニアになる”というお話に続いて、やはりアプリケーションノートの活用方法に焦点を当てます。そして、この技術資料から“豆”知識をいかに吸い取るかについてお話したいと思います。ぜひ皆さんの知識の糧にしていただければ幸いです。
前回は、自分の設計仕様から半導体製品を検索して、その仕様に近いアプリケーションノートを探して、“チェンジニア”に変身するという技を紹介しました。これは、もともと目標とする仕様があって、アプリケーションノートに記載されている標準回路をいかに活用してうまく手抜きをし、手早く設計を進めるかが主眼でした。
今回は、アプリケーションノートが取り扱う話題の広さを確認し、それらを自分の知識としていかに吸収し、積み重ねていくかについてお伝えします。エンジニアとして備えておくべき知識は多岐にわたり、その習得には時間がかかるものです。設計業務に当たっていて、問題に直面してから勉強を始めたのでは間に合いません。プロジェクトの合間など、時間がとりやすい時期に、アプリケーションノートを開いて、新しい知識を吸い上げてください。もちろん、英語にはなるべく真正面からぶつからないように、うまく逃げましょう!!
ただ、注意していただきたいのは、アプリケーションノートを教材として活用するという方法は、進行中のプロジェクトで切羽詰っているときにはお勧めしません。そういうときは、イライラしてしまい、情報をじっくり吟味する時間がとれないものです。暇つぶしといったら言葉が悪いですが、仕事に余裕のある時期を有効に使おう!という心構えで臨むのがちょうどいいと個人的には思っています。
半導体メーカーが提供するアプリケーションノートは、IC製品や評価キットの使い方や応用回路について述べていることが多いのですが、中には製品群を問わず広範囲に適用できるアプリケーションノートもあります。例えば、IC全般で使いこなしに当たって必要になるプリント基板レイアウトのテクニック、ESD(静電気放電)やEMI(電磁雑音)、他にもパッケージのマウントや熱設計などについて解説するアプリケーションノートがそれに当てはまります。
これらは、個々のICの動作よりも“実践”や“考察”を主としたアプリケーションノートになっていますから、ちょっと息抜き代わりにひもといてもるのも良いでしょう。
1つ、EMIに関する例を挙げてみます。EMIはデジタル信号やスイッチング電源で使用する矩形波によって生じる雑音ですが、この主要因はICが出力する信号だけではなく、プリント基板のレイアウトにも大きく影響を受けてしまいます。しかし、ICのデータシートには、「大きな電流が流れる経路は、できるだけループを小さくしてください」という注意くらいしか載っていません。もっと詳しく、レイアウトはどうあるべきなのか――― グラウンドどのように引き回すのがいいのか? ベタグラウンドが良いとしても、理想的な状態は現実的に無理なので、これぐらいなら大丈夫か?――― を知りたいですよね。
このような知見が得られるアプリケーションノートを見つけ出す手掛かりとしては、“EMI”と“レイアウト”がキーワードになってきます。半導体メーカーのホームページにあるサイト検索の機能を使って、どのようなものが見つかるか、試してみましょう。もちろん、ヒットしやすいように、キーワードは英語で検索エンジンに与えます。
たくさんヒットしましたね。この例では、サイトの全てを対象に検索した結果が出ていますので、まずアプリケーションノートだけに絞りましょう。タブで「App notes」をクリックします。ポチッ。
すると、製品情報は対象から外れ、アプリケーションノートだけを対象に検索しますので、探している情報に近づくことができます。この後は、前回の最後に紹介した小技「CTRL+左クリック」を連打して、ヒットしたアプリケーションノートをどんどん開いていきます。ここで、同じ題名のアプリケーションノートでも[PDF]とタグが付いているものと、そうでないもの(HTML版)がありますが、これは単に表示フォーマットの違いで中身は同じですから、お好みで選べばよいと思います。
そうやって幾つかアプリケーションノートを開いたら、中身をいろいろと吟味していきましょう。というのも、題名が異なっても、同じ内容が書かれていることもありますから、1本ずつ吟味が必要になるはずです。
そして、忘れてはいけないのは、いかに英語を回避するかですね。この例では、画面の右上に「English」と表示されているプルダウンメニューを開いて、「日本語」を選ぶと、日本語版が存在しているアプリケーションノートについては、開いておいたものが日本語に切り替わります。
他の半導体メーカーのホームページでも、このような言語選択の機能があれば、ぜひ使ってみてください。
さて、ここでは試しに下記の5本のアプリケーションノートを開いてみました。
そして言語を切り替えてみると……なんと3本も日本語版がありました。ラッキ〜!
残り2本(4.と5.)は、私たちの苦手な英語版ですから、英文そのものを真正面から読解して理解しようとするのではなく、掲載図から直感的に理解していきましょう。
この2本はどちらも、大電流が流れる経路のループのことでした。それでは、参考になりそうなレイアウトは……ありました! 上記5.のアプリケーションノートに載っています。もう1本の4.の方には、コンデンサのレイアウト方法も書いてありました。う〜ん、なるほど。なんとなーく、部品のレイアウトは見えてきました、ちょっと知識が増えましたね。
この手順は、検索キーワードを変えればそのまま他の調べ物にも流用できると思います。先ほど調べたEMIですが、電源以外でのレイアウトはどうなるのだろう?というミステリーを自分の中で作れば、レイアウトに関する他のテクニックも学べると思います。
このような手法でいろいろ調べていくと、だんだんと知識が増えていくでしょう。ただ、これはあまり期待しないでいただきたいのですが、アプリケーションノートの全ての文章が必ずしも自分の知恵になるとは限りません。それでも、たとえ収穫は少なくてもゼロではないはず。ちりも積もれば山になると言いますから、その心がけが大事ですね!!
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