ルネサス エレクトロニクスは、電力メーターに必要な24ビットA/Dコンバータや高精度リアルタイムクロックなどの周辺機能を1チップに集積したマイコン「RL78/I1B」を製品化し、サンプル出荷を開始した。
ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)は2013年7月23日、24ビット分解能のシグマデルタ型A-Dコンバータなどを搭載した電力メーター向けマイコン「RL78/I1B」のサンプル出荷を開始した。「世界最小の消費電流」(ルネサス)というシグマデルタ型A-Dコンバータなどの採用により、電力計測時の消費電力を従来に比べ約60%削減した。サンプル価格は、フラッシュメモリ容量128kB/100ピン品で320円。2013年11月から量産を実施し、2014年に月間200万個規模での生産を見込んでいる。
ルネサスは、電力メーターの消費電力動作化を目指し、1チャンネル当たり0.53mAという低消費電流の24ビット分解能シグマデルタ型A-Dコンバータを新規開発。「世界最小の消費電流」と主張する同A-Dコンバータを新製品に4チャンネル搭載した。従来の電力メーター向けマイコン(型番:78K0R/Lx3-M)と比べ、「約1/4の低動作電流」(同社)を実現した。これにより、新製品は6MHz動作時の消費電流を3.3mAに抑え低電力で電力計測が行える他、「停電時のバックアップ・バッテリ駆動でも従来比約2倍以上の長時間動作に貢献する」としている。
内蔵するリアルタイムクロック(RTC)は、最小0.96ppmの分解能で時計誤差補正が行える精度を実現した。さらに内蔵温度センサーとRTCを組み合わせた温度補正機能も搭載。従来の電力メーター向けマイコンでは、正確な時計機能を実現するため、外付け専用ICを使用したが、新製品はRTCの高精度化により「外付け部品を削減し、(電力メーターの)システムコストを約8%低減させることができる」(ルネサス)。
32.768kHzのサブクロック水晶振動子を基準クロックとして、ハードウェアで自動的に周波数を補正する「高速オンチップ・オシレータ・クロック周波数補正機能」も新たに開発し搭載。従来品では±5%だった発振精度を±0.05%まで高めた。従来のマイコンは、PLL(Phase Locked Loop)で外付けサブクロックからシステムクロックを作り出す構成が一般的であったため、外付けサブクロック水晶振動子が万が一停止した場合、CPUの継続動作が保証できなかった。これに対し、新製品は、外付けサブクロック水晶振動子が停止し、周波数補正機能が使用できなくなっても高速オンチップ・オシレータ・クロックは±1%の精度で発振を継続。CPUが動作可能であるため、外部部品が原因のシステム破綻を防ぐことができ、電力メーターの安定動作を実現する。
安全な電力メーターシステムを構築するため、従来は外付けトランジスタで構築されていたバッテリ・バックアップ回路を内蔵し、バッテリを直結可能な専用端子を搭載した。同回路は停電を検知して電源をバックアップバッテリへ切り替えることができるため、停電中のCPUやRTC、その他の周辺機能の動作を保証する。さらに停電時も外部割込み命令の監視やRAMデータ保持、外部スイッチ押下によるLCD表示などに対応し、電力メーターの筐体開封検出やEEPROMへのデータ集録など、「耐タンパー性、機能安全に優れた電力メーターシステムを実現することができる」(ルネサス)としている。
なお、新製品は、内蔵フラッシュメモリ容量64KB品と同128KB品の2種あり、それぞれパ80ピンLQFPパッケージ品と100ピンLQFPパッケージ品が用意されている。
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