可変周波数の発振器を構成する方法として、NORゲートを2個用いたRC発振回路を考案した。この回路による可変周波数範囲は広い。
VCO(電圧制御発振器)はアナログ回路である。デジタル・プログラマブル・チップのライブラリーには含まれていない。信号の同期やクロックの逓倍でVCOが欲しいときには、ANDゲートやNANDゲートなどの標準論理機能を利用する必要がある。
可変周波数の発振器を構成する方法はいくつかある。例えば、バラクター・ダイオードを用いることによって周波数を変えられる。ただしこのダイオードは、電圧変化に対する周波数変化が小さい。従って、1個のインバーターと複数のコンデンサーで構成される一般的なピアース(Pierce)発振器では使いづらい。
別の案としてシュミット・トリガー・インバーターと、可変の充電抵抗を利用する方法がある。これは動作はするものの、ヒステリシスのばらつきが大きい。また、ICチップによって周波数が大きく変わってしまう。
上記の理由から、NORゲートを2個用いたRC発振回路を考案した(図1)。この回路による可変周波数範囲は広い。
CMOSだけの回路だと、ハイレベルとローレベルのしきい電圧は約VCC/2になり、デバイスに依存しない。出力はデューティー比が50%の方形波になる。
電源投入時に図1のコンデンサーC1とC2は充電されておらず、NORゲートIC1Aの出力はローレベルである。するともう1つのNORゲートIC1Bの出力はハイレベルになり、コンデンサーC2は時定数R2C2で充電される。この充電時間には、ICSTから抵抗R4を経由してくる充電電流も影響する。
コンデンサーC2の電圧がVCC/2に達すると、IC1Bはローレベルに遷移する。するとIC1Aの出力はハイレベルとなり、C1は時定数R1C1で充電される。この充電時間には、ICSTから抵抗R3を経由してくる充電電流も影響する。一方でIC1Bがローレベルに遷移するとダイオードD2は順方向にバイアスされるので、C2が急速に放電される。
この回路は、C1=C2、R1=R2、R3=R4の条件で、50%のデューティー比を実現する。R4およびR3の値と制御電圧VSTが、VCOにおける周波数変化対電圧変化の利得(kHz/V)を決定する。
この利得を最大にする回路を図2に示す。ここでは米Altera社のPLD「EPM3032」を用いた。図1のダイオードを3ステート・バッファーに置き換えている。充電抵抗は制御電圧に直接、接続した。図2の回路定数を利用すると、約700kHz/Vという最も高い利得を実現できる。VCOを止めるときは、制御電圧をVCC/2よりも低くする。
CMOS入力を備えるPLDのほとんどで、この回路を構成できる。制御電圧は、電源電圧を超えても構わない。チップへの入力電圧はVCC/2を超えないからだ。このため、広い入力電圧範囲を有する電圧周波数変換回路に適している。
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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。
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