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液晶テレビを低電力化する新たなLED駆動方式電源設計(1/5 ページ)

世界規模で省エネ化が迫られる中、テレビも当然ながらエネルギー効率を高めなければならない。低消費電力で高画質な有機ELテレビの登場に期待する声も多いが、液晶テレビのバックライト駆動方式を見直すことで、有機ELテレビと同等の消費電力、画質を低価格で実現できる可能性もある。本稿では、将来のエネルギー効率規制を達成することも見据えて、液晶テレビの消費電力低減を実現する新たなLEDバックライト駆動技術を紹介する。

» 2013年09月05日 11時00分 公開
[Peter Rust, Werner Schogler, Manfred Pauritsch, Herbert Truppe,ams]

 テレビの消費電力は、一般的な家庭の総電力消費量の3〜8%を占めるという。省エネ化、節電に向けて、テレビの消費電力は無視できない存在だ。その中で、テレビにもさまざまなエネルギー効率に関する規制が存在する。

 例えば、Energy Starの2008年基準では、85ワット以下に消費電力を低減しなければならない。この規制は、どの画面サイズのテレビにも適用されるもので、大画面のテレビほど規制をクリアするためには、難しい設計が要求される。

 自主的な規制を呼びかけるEnergy Star以外にも、テレビのエネルギー効率規制は存在する。例えば、米国カリフォルニア州のエネルギー委員会は、独自の規制を導入し、その内容はEnergy Starよりも少し厳しい内容となっている。加えて、その規制をクリアしない限り、同州でのテレビ販売が禁止される。

 欧州でも、白物家電のエネルギー効率規制が長年にわたって実施されていることなどから、消費者が機器を購入する際に、エネルギー効率を重要な指標として用いていることから、テレビでもエネルギー効率を高めることは必須となっている。

 これら規制や消費者の要求を満たすには、LEDバックライト方式を用いた液晶テレビが唯一の現実的な解と思われるが、今後、さらなる厳しい規制、省エネ要求が出てきた場合に、対応に苦慮することになるだろう。自発光し、消費電力が小さな有機ELディスプレイ(OLED)であれば、将来の規制に対し簡単に対応できるかもしれない。しかし、OLEDは、法外ともいえるような巨額の投資が必要であり、現実的ではない。

 最先端のTFT液晶技術と局所ごとにLEDを調光する“ローカル調光”によるLEDバックライトを用いることで、OLEDに匹敵するような画質、低消費電力なテレビを、OLEDよりもはるかに安いコストで実現できる可能性がある。

 液晶テレビの消費電力のうち、30〜70%は、LEDバックライト関連システムが占める。バックライト電源回路の効率改善を進めることで、液晶テレビとしてのエネルギー効率全体を高めることになる。そして、電源回路は小さな効率の改善の積み重ねによって、大きな省エネ化が達成される。

LEDバックライトの方式

 LEDバックライトには、大きく2つの方式が存在する。1つは、LEDが画面の端に配置されているエッジライト/間接方式だ。端に配置されたLEDからの光を導光板で均一に画面全体に分散させる。この方式は、最大60インチまでの画面で良好な光学均一性を保ち、5〜10mm程度の厚さのバックライトユニットが実現できる。

(図1)左がエッジライト/間接方式、右がダイレクト/直接方式のイメージ

 もう1つは、ダイレクト/直接方式で、液晶の直下に直接、LEDを配置する。液晶の画面サイズに制限はなく、低消費電力、優れた熱設計と拡張性がある。ただエッジライト方式に比べ、バックライトユニットが厚くなる傾向にあるが、最新の配光技術などを用いることで現状8mmの厚さに抑えることも可能になっている。何より、ダイレクト方式の最大の利点は、局所的な調光(ローカルディミング)により、OLEDに匹敵する低い消費電力と、動的コントラスを増大させられる点にある。

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