LEDバックライトの駆動方式を選定することは、消費電力の節減と画像品質の大幅な向上を実現する上での最も重要な要素だ。設計者に求められるのは、LEDストリングの局所ごとの発光制御と部品数の最少化を最良にバランスさせることだ。
1つのスイッチングモード電源(SMPS:switched-mode power supply)からストリング状に配列されたバックライト用LEDに電圧が供給される。LEDストリングに流れる電流は電流シンクにより制御される。消費電力を最小化するには、ILED(LED電流)シンク(両端)の電圧をLED(ストリング)に所要の電流を確実に流すために必要な電圧値よりもほんのわずかだけ高くすることが必要だ(図2)。
一般的な設計では、ILED シンクとSMPSの間にフィードバックパスを構成してSMPS出力電圧を制御する。このフィードバック機能はLED素子ごとの順方向電圧(Vf)のばらつきを許容できるものでなければならない。白色LEDの標準的なVfは3.2Vであり、LED素子ごとに±200mV程度ばらつく。そのため、例えば10素子のストリングの場合、ストリング両端の電圧VLEDは30〜34Vの範囲になる。
DC‐DCコンバータに必要とされる電圧は次のように計算される:
VDC-DC=VLED+VSINK;VLED=n×Vf(LED)
ここで、VSINKを0.5Vと仮定すると、ILEDシンクは実際の(ばらつきを含んだ)LED順方向電圧に対応して30.5〜34.5Vの範囲にVDC‐DCを制御しなければならない。
単一のLEDストリングを使用する構成は、ストリング両端間の電圧がLED素子数の増加とともに高くなるという問題があるため、多くの場合に適切な方式ではない。VOUTとVINの比(VOUT/VIN)が一定値を超えると、SMPSの効率が顕著に低下する。SMPSに要求される電圧が過大になるのを避けるためには、複数のストリングを使用すればよい。
この方式の最も簡単なアプローチは、各ストリングにシングル・ストリング/シングル・コンバータ構成を適用することだ(図3)。このアプローチの利点は、各ストリングの電圧を個別に制御できるため効率が良くなることだ。欠点は、ストリングの各々に個別のDC‐DCコンバータ、MOSFET、コイル、ダイオード、出力コンデンサを必要とすることから、コストが高くなることだ。部品(bill of material/BOM)コストを低減するためには、各ストリングのLED数を増やして長いストリングを構成し、LEDチャンネル数を減らす方法が考えられる。しかし、この方法は、もう1つの重要な電力節減技術であるローカルディミング実現するためのシステム機能を妨げることになる。そのため、この方式には特別に魅力的なトレードオフ項目もない。
BOMコストを削減するためのより本質的なアプローチとして、マルチ・ストリングとシングルDC‐DCコンバータの組み合わせが考えられる(図4)。
このアプローチの欠点は、SMPS電圧が構成ストリングの中で最大になる順方向電圧よりもさらに高い電圧に制御されなければならないことであり、順方向電圧の低いストリングが必要以上に高い電圧で動作することになることだ。順方向電圧の低いストリングに対するILEDシンクの消費電力が過剰になり、それにより発生する発熱が回路基板から放出されることになるため、電力効率が低下することになる。
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