前回の「これは便利! 2端子の発振回路『シリアルオシレータ』」ではシリアルオシレータの目的や回路動作を詳細に説明した。しかし前回の回路では発振回路のオン時間が非常に短く用途が限られていた。今回はオン時間を長くし、電流の駆動能力を上げることで、もっと便利で応用範囲が広い回路に変身させたので報告する。
前回の「これは便利! 2端子の発振回路『シリアルオシレータ』」ではシリアルオシレータの目的や回路動作を詳細に説明した。しかし前回の回路では発振回路のオン時間が非常に短く用途が限られていた。今回はオン時間を長くし、電流の駆動能力を上げることで、もっと便利で応用範囲が広い回路に変身させたので報告する。
30年前にこの回路を考案した時はバイポーラのトランジスタしかなかった時代であり、また白色LEDも存在していなかった。このため、この回路の使用用途はほとんどなかった。最近は、オン抵抗が低く、低ゲート電圧のFETが販売され、白色LEDがいろいろな分野に使用されるようになり、シリアルオシレータが能力を発揮できる環境になった。
シリアルオシレータの回路を大きく変身させた部品は“FET”だ。特に電池の低電圧動作用に開発された低いゲート電圧のFETが非常に効果的だ。その応用回路例を図1に示す。
図1の回路は前回の回路とほとんど変わっていないように見える。回路の変更点は2つあり、抵抗R4の追加と、Q2をNPNトランジスタからN-MOS FETへ変更した点である。
抵抗R4の目的は、コンデンサC1の放電時間を調整し所定時間後にQ2をオフさせることにある。もしR4がなかったらQ2は一度オンするとゲート電荷が放電されずオンしっぱなしになってしまう。その他の部品は前回の回路と同様である。回路の詳細な動作は前回に説明したので今回は省略する。
図1の回路で1番のポイントはQ2FETのゲート電圧である。トランジスタ並みのVBE(0.6V)になれば、オン時間をオフ時間と同じくらい長くすることも可能になる。
低ゲート電圧のFETは、ローム社製の0.9V駆動タイプのRYC002N05がお勧めである。回路の試作時に、このFETをサンプルで頂きいろいろな評価ができた。最近はこのFETを通販で購入している。このFETを勧める理由は連続電流が200mA、パルス電流で800mAが流せ、ゲート電圧0.9Vでオン抵抗は3Ωと低いからだ。ランチャーライトの点滅用には最適のFETである。
図1のシリアルオシレータ基板のクローズアップ写真を図2に示す。部品を数えてみると分かるが、抵抗が7個あり図1の回路と少し違う。これは回路の動作電圧、点滅の周期とオン時間を最適条件に調整しているためである。
図2で、チップ部品の上に白い接着剤が見えるが、これはライトのスプリングがチップ部品に接触して誤動作するのを防いでいる。また基板の中央部をハンダで盛り上げているが、この部分にライトの蓋のバネを押し当てている。この基板のサイズは15mm角の片面ユニバーサル基板で、2.5mmピッチのランドが36個ある。この基板上に1mm〜3mmのチップ部品を手ハンダし、ハンダでチップ部品を接続している。図2の上側のバネ材は100円ショップで販売されている細くて弾力がある黄銅のワイヤを使っている。
なお、この基板の部品代は全ての部品を合わせても数十円で済む。私は、この基板を作ってはランチャーライトに仕込んでオリジナルの点滅ライトを作り、初対面の人に名刺代わりにプレゼントしている。
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