シミュレータ(Multisim)を使用して類似の回路の動作をシミュレーションしてみた。なお標準ライブラリにあるFET(2N7000)はゲートオン電圧が2.0V と高い。このため、このFETを使った場合は電源電圧が6V程度必要なことが分かった。シミュレータ(Multisim)で確認した回路図を図5、シミュレートした動作波形を図6に示す。
図5のオシロスコープでCH.AはC1の充放電波形、CH.BはFET Q2のドレイン電圧である。図4のオシロ波形とシミュレートした図6の波形と比較するとほぼ同等であることが分かる。なお、図6の波形は抵抗R7の効果でFETオフ時の電圧が電源電圧まで上がっている。シミュレータ(Multisim)は回路の電圧や動作の時間も正確に測定できるので、かなり便利なツールだ。
シリアルオシレータの一番の強みは、2端子の発振回路ということにあり、回路の途中のどこにでも簡単に挿入が可能な点である。また回路の部品点数が少ないため、チップ部品を使うことで基板が薄くなり小型化が簡単にできるという点にもある。この基板を付加することで電気製品に新しい機能を付加できる。基板を付加する場所はスペースや部品の配置に合わせて基板の形や大きさを選べば良い。例えば電池を使用している機器では基板のサイズをもっと小さくして5φ程度に作れば、電池と電池の間に基板を入れることもできる。このイメージを図7に示す。
図7の上図のように電池には接続用のバネがあり、バネを少し押して電池と電池の間に2mm程度の隙間を作り、この隙間にシリアルオシレータを挿入したのが図7の下の図だ。基板を小型化し、このような配置にすれば電池を使っている機器の点滅動作や間欠動作も可能になり、用途もかなり広くなる。しかし手作りで作るにはちょっと無理なサイズである。
また、フォトセンサーなどの光電素子を回路に追加すると、暗くなったら点滅を行うような動作にも簡単に応用できる。例えばC1と並列にフォトトランジスタなどの光電素子を接続した例で説明する。明るい時は光電素子に電流が流れコンデンサの電位が上がらないためLEDは点滅しない。暗くなると光電素子に流れる電流が少なくなってコンデンサの電位が上がりLEDが点滅する。この例では周囲の明るさの変化で発振周期が変わる面白みもある。
シリアルオシレータは発振回路の基本回路でありライトの点滅以外の用途でも、もっと有用な使い方ができる。今回は出力トランジスタにFETを採用することで、駆動能力を上げオン時間も長くして、パワーアップできた。次回は図2で紹介したシリアルオシレータの作り方を詳しく説明する。
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