モバイル機器向けのFPGAとして「iCE40」ファミリを展開しているラティスセミコンダクターは、同ファミリの新製品「iCE40 Ultra」を発表した。2.1×1.7mmのパッケージに、16ビット×16ビット乗算器や不揮発性コンフィギュレーションメモリ、I2CやSPIなどのハードマクロIPを搭載している。
ラティスセミコンダクターは2014年7月23日、モバイル機器向けのFPGA「iCE40」ファミリの新シリーズとして「iCE40 Ultra」を発表した。LED駆動用のI/Oや16ビット×16ビット乗算器、I2CやSPI、不揮発性コンフィギュレーションメモリなどさまざまなハードマクロIPを、1.7×2.1mmのWLCS(Wafer Level Chip Scale)に搭載していることが特長だ。LUT(ルックアップテーブル)数が1100、2048、3520の3品種をそろえる。数百万個単位の大量購入時の単価は約0.50米ドルと低く抑えられている。
ラティスセミコンダクターが、スマートフォンなどモバイル機器向けのFPGAを最初に発表したのは2012年だ。このFPGAは、足りないI/Oを補うなどアプリケーションプロセッサを“補佐”する用途をターゲットにしている(関連記事:サムスンのGALAXYも搭載! 低価格/小型FPGAで再浮上するラティスセミコン)。従来のシリーズである「iCE40 LP」ではハードマクロはほとんど搭載されていなかったが、スマートフォンメーカーなどがどのような機能を搭載しているのかをここ数年見てきて、必要かつ差異化を図りやすい機能をすぐに実現できるようなハードマクロを選び抜いて搭載した。それが、今回発表したiCE40 Ultraである。ラティスセミコンダクターによると、「回路設計などを大幅に変えたわけではなく、既存の技術を使ってiCE40 Ultraを開発した。どんな機能を搭載するかが最も重要なので、最近のスマートフォンの機能の動向を見ながら、iCE40の“製品定義”を考え直したというイメージだ」と話す。
例えば、通話中にLEDを点灯させたいというニーズがあるので、24mAという通常(8mAや12mA)よりも高い定電流シンクをLED駆動向けに3本搭載した。リモコン機能を搭載するスマートフォンもあることから、赤外線通信用として、500mAの定電流シンク1本も搭載されている。また、各種センサーから入ってきた情報をある程度処理してアプリケーションプロセッサの負担を減らすために、16ビット×16ビット乗算器を搭載している。乗算器は、小規模のPLD(Programmable Logic Device)ではあまりみられないものだ。
I2CやSPIをハードマクロとして搭載している点も大きな特長である。ラティスセミコンダクターによれば、これらをLUTで構成しようとすると2000LUTほど使うことになるという。その他、10kHzや48MHzのオシレータ、1個のプログラマブルPLLなどを搭載している。これだけのハードマクロを搭載していながら、パッケージサイズは1.7×2.1mmを実現している(0.4mmピッチの20ボールWLCSの場合)。「市場に投入されている最も近い製品に比べて、約30%小さいパッケージサイズになっている」(同社)。さらに消費電流は、従来品である「iCE40 LP4K」(LUTは3520個)の360μAに比べて、約75%減となる95μAまで削減されている。
iCE40 Ultra向けの設計ツールとして、iCE40ファミリ向けの「iCEcube2」を使用できる。iCEcube2は無償でダウンロードすることが可能だ。
ラティスセミコンダクターは、「FPGAを搭載することで、消費電力、コスト、基板面積が増えるというデメリットはあるが、国や地域によって異なるニーズに応えるための機能を素早く実現したり、何らかの機能を補ったりできるというメリットがある」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.