3回にわたって、最新USB規格である「USB3.1」に対応するための試験について解説していく。第1回は、10Gビット/秒の高速データレートに対処するための課題を洗い出しながら、トランスミッタとレシーバのプレコンプライアンス試験の概要を紹介しよう。
「SuperSpeed USB3.1」はUSBというポピュラーなインタフェースの最新バージョンとしての地位を徐々に占めつつある。
USB3.1はデータ転送速度をUSB3.0の5Gビット/秒から10Gビット/秒に高速化する。この高速化とともに、128b/132bエンコーディングや非常に複雑なイコライザの導入といった変更が加わったことから、USB3.1の全体設計は複雑化を増し、PHY(physical layer、物理層)の検証やデバッグに新たな挑戦的課題が生まれてきた。さらに、最近になって、改訂版のUSB Power Delivery2.0規格、新方式のリバーシブル型コネクタのUSB Type-C規格が発行された。
本稿は全3回連載の初回であり、10Gビット/秒に達するデータレートに対処するための課題を概観し、トランスミッタとレシーバのプレコンプライアンス試験の概要を解説する。第2回は、Type-Cコネクタに焦点を合わせ予想される試験対応について解説する。第3回では、Power Delivery規格について解説し、その試験について掘り下げる。
PCI Express Gen3.0および次世代のGen4.0のような企業向け規格とは異なり、USB3.1の最優先事項は“コスト”だ。USBは民生向けインタフェースであり、低価格でなければならないのは当然としつつ、一方では高信頼の動作を提供し、さらに600Mビット/秒あるいはより高速転送速度の高速SSD(solid state drive)などのアプリケーション要求に対応できなければならない。このような考慮から低コスト化のためのさまざまなトレードオフがなされた。例えば、10Gビット/秒実現のために最大ケーブル長を1mに縮めた(これまでのUSBでは3m)ことなどだ。
表1にUSB3.1と前世代との差異をPHY検証の観点からまとめた。なお、USB3.1規格の発行に伴いUSB3.0は技術的には存在しないものとなったため、ここでは正式に5Gビット/秒データレートをUSB3.1 Super Speed Gen1(以下、USB3.1 Gen1)と呼ぶ。呼び方はどうであれ、USBは前バージョンとの下位互換性を維持しなければならない。
Gen1とGen2の差異の最も重要な点は高速データレートだが、PCI Express(以下、PCIe)になじみ深い読者ならば、USB3.1 Gen2のエンコーディングがPCIe(128b/132b)と同様な方式に変わったものだと気付くだろう。これまでのUSB PHYは全て、多くのシリアルバス規格で古くから使用されてきた8b/10bエンコーディングを利用した。USB3.1 Gen2では新規のステートマシンが導入され、128b/132bエンコーディングが実現された。
この変更の理由は何か。最大の動機は実際的な条件の中で一層高速のデータレートを実現することだ。ヘッダに4ビットを割り当てると、信頼性が高くなり、エラー処理も改善される。例えば、1ビットのエラーならば、データを再転送することなくエラー訂正が可能だ。USB3.1 Gen2はUSB3.1Gen1に比べ伝送速度が2倍になるだけでなく、エラー処理の改善とオーバーヘッドの低減(8b/10bでは20%、128b/132bでは3%)により伝送ビットの使用率が向上する。
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