TDKは2015年5月、家庭や工場のエネルギー管理システム用に、クランプ型の交流電流センサー「CCTシリーズ」の新製品を発表した。大電流に対応できる300A対応品と、80A対応品がある。フェライト材料を開発することで、300Aに対応しつつ小型のサイズに抑えることができた。
TDKは2015年5月12日、クランプ型の交流電流センサー「CCTシリーズ」の新製品として、300A対応品と80A対応品を発表した。クランプ型とは文字通りケーブルを挟み込んで取り付けるもの。分電盤などのケーブルに“後付け”できるので、取り付けのコストを抑えられるのが特徴だ。クランプの内径(φ)は、300A品が24mm、80A品が10mm。家庭や工場などのエネルギー管理システム*)の用途に向ける。
*)例えば、HEMS(Home Energy Management System)やBEMS(Building Energy Management System)、FEMS(Factory Energy Management System)など。
TDKは2014年4月、CCTシリーズとして30A品、100A品を発表した。今回追加した300A品は、BEMS/FEMSなど10個以上の分電盤を備えるような、より大電流のモニタリングに向ける。80A品は、従来品の30A品/100A品の中間の容量が欲しいというニーズがあったため、それに応えた製品となる。サンプル単価は、80A品が1300円、300A品は2800円。2015年7月から販売を開始する。
今回の2品種では、新しいフェライト材料を開発し、それを用いた。TDKは詳細は「明かせない」としたが「電流の検出に必要な特性を伸ばしたフェライト材料を開発した」と説明している。これによって、300A品を、幅48.5mm×奥行き39.5mm×高さ72.0mmのサイズ、かつ変流比*)3000:1で実現した。CCTシリーズの4製品の変流比は、全て3000:1である。
*)変流比:2次出力側と1次貫通側の電流比。TDKによると、3000:1が業界標準だという。
TDKは、CCTシリーズの製造において、巻き線を巻く工程やツェナーダイオードをはんだ付けする工程などを自動化している。TDKは「クランプ型電流センサーは、“手作り”の要素が強い部品」と話す。巻き線を巻いたりダイオードをはんだ付けしたりする工程を、手作業で行っている場合も多いという。そうした手作業により品質にばらつきが発生する可能性もある。CCTシリーズでは、いくつかの工程を自動化することでこうしたばらつきの発生を抑え、安定した品質の電流センサーを供給できるとしている。
今回は、大電流向けとして300A品を開発したが、その先として600A品も検討している。600A品はBEMSやFEMSでニーズはあるが、実現するのはそれほど簡単ではないという。TDKは、「600Aだと材料にフェライトを使わず、ケイ素鋼板を使う。だがケイ素鋼板は、交流電流において低い周波数のものしか検出できず、電流検出の精度が低くなる。フェライトは高い周波数でも検出できるので、より正確な電流検出が可能になる」と説明する。「現時点では、300A品で十分対応可能だと考えている」(同社)。
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