TDKは、車載用電源系薄膜インダクター「TFM201610ALMA(インダクタンス値2.2uH)」シリーズを開発したと発表した。動作温度保証範囲は−55〜150℃を実現し、ECU(Electronic Control Unit)に求められる高温環境化での使用に耐えることができるという。
TDKは2016年4月12日、車載用電源系薄膜インダクター「TFM201610ALMA(インダクタンス値2.2μH)」シリーズを開発したと発表した。2.0×1.6×1.0mmと小型でありながら、152mΩ(max)の低直流抵抗/1.9A(max)の定格電流を実現している。
また、動作温度保証範囲は−55〜150℃、車載用電子部品規格であるAEC-Q200に準拠。これにより、ADAS(先進運転支援システム)に活用されるモジュールやECU(電子制御ユニット)に求められる、高温環境化での使用に耐えることができるという。
サンプル価格は50円/個で、量産開始は2016年9月。月産500万個の予定である。
「TFMシリーズ」は、スマートフォンやタブレットPC向けのインダクターである。電源コイルは巻き線タイプが一般的だが、TFMシリーズは同社のHDD用磁気ヘッドで培った薄膜プロセスを使用している。「車載用インダクターも今まで展開しているが、ADASのモジュールやECUで求められる小型で高性能な製品を実現するには、薄膜プロセスを使用したTFMシリーズで開発する必要があった」(同社)と語る。薄膜プロセスの活用により、従来の車載用インダクター(2.5×2.0mmサイズ)と比較して、実装面積を36%、直流抵抗を最大29%削減した他、インダクター飽和電流(Isat)は最大1.9倍になったという。
また、巻き線タイプは小型化するほど、細かくコイルを巻かなければいけないので、ワイヤにかかるストレスが大きくなる。メッキで成長させてコイルパターンを形成する薄膜プロセスは応力フリーで形成できるため、絶縁被膜に対する影響も少ないという。これが、高耐熱や高絶縁性を実現できた1つの要因として同社は挙げる。
従来のTFMシリーズからは車載で求められる絶縁精度を実現するために、材料の見直しを行っている。具体的には、金属磁性材料による絶縁性の向上、樹脂電極採用による耐衝撃性の向上が挙げられる。これにより、スマートフォン向けでは耐電圧8Vだったのに対して、TFM201610ALMAシリーズは車載品質に対応できる耐電圧20Vを実現した。
今後は、4/10μHといった高インダクタンスの製品化を検討。動作温度保証範囲も165℃(max)まで対応し、多様な設計用途に対応できる製品を提供するとした。
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