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スイッチノードリンギングの原因と対策広い入力電圧範囲の高速DC-DCコンバーターで発生する(3/6 ページ)

» 2016年04月26日 11時30分 公開

降圧過程のスイッチノードリンギング:メカニズム

 降圧コンバーターでのスイッチノードリンギングは、ハイサイドスイッチQH1がターンオンする際に生じる。LDRV1がターンオフすると、インダクター電流がQL1のボディーダイオードに流れ始める。ハイサイドゲートドライバHDRV1がQH1をターンオンし始めると、インダクター電流がローサイドボディーダイオードから、ハイサイドスイッチに移り始める(ローサイドボディーダイオードに流れていたインダクター電流が、ハイサイドスイッチを経由する流れに変わり始める)。この時、QH1とQL1とに直列の寄生インダクタンスは、SW1ノードの寄生容量と同期FET出力容量とを充電する電流スパイクからエネルギーを蓄積する。電流スパイクは、VINからGNDに流れる余分の逆回復電流によって、より増大する。次に、漏えいインダクタンスがSW1の全容量とともにLCタンク回路を構成し、リンギングを引き起こす。図3は、QH1がターンオンする時の降圧スイッチノード(SW1)での代表的なリンギング波形を示す。

図3:降圧スイッチノードリンギングのメカニズム

昇圧過程のスイッチノードリンギング:メカニズム

 昇圧コンバーターでのスイッチノードリンギングは、ローサイドスイッチQL2(図4)がターンオンするときに発生する。

図4:寄生要素(赤色表示)、外付け部品(緑色表示)を含む昇圧電力段

 HDRV2がターンオフすると、インダクター電流がQH2のボディーダイオードに流れ始める。ローサイドゲートドライバLDRV2がQL2をターンオンし始めると、インダクター電流はハイサイドボディーダイオードからローサイドスイッチに移り始める。この時点で、QH2とQL2とに直列の寄生インダクタンスは、SW2ノードの寄生容量と同期FET出力容量とを放電するための電流スパイクからエネルギーを蓄積する。この電流スパイクは、VOUTからGNDに流れる余分の逆回復電流に伴って一層増大する。その際、漏えいインダクタンスとSW2の全容量とによりLCタンク回路が構成され、リンギングが発生する。図5は、QL2がターンオンしたときの昇圧スイッチノード(SW2)のリンギングの代表的な波形を示す。

図5:昇圧スイッチノードリンギングのメカニズム。SW2の負リンギングによりBOOT2−SW2電圧がVCCを超える値になる

降圧スイッチノードリンギング:結果と対策

 SW1の電圧は、入力電圧(VIN)よりはるかに高いスパイクになることがある。この超過電圧は、ナノ秒というわずかの時間の間で生じるが、MOSFETのドレイン・ソース(VDS)定格電圧を超え、MOSFETの信頼性を損なうことにもなる。また、その電圧は、コントローラ/ドライバのSW1あるいはBOOT1の定格電圧を超えることもある。コントローラのダメージを防ぐには、DC動作に対する要求条件よりも高い定格電圧のFET/コントローラを使用するか、あるいはSW1でのリンギングを抑圧するためにスナバ回路またはゲート抵抗を使用することができる。降圧スイッチノードリンギングをコントロールするための方法は、「参考資料(1)」に幅広く記載されている。

昇圧スイッチノードリンギング:結果と対策

 昇圧スイッチノードリンギングを取り扱った資料は少なく、論議された場合でも、ハイサイドリンギングが主題になっている。前述のように、ローサイドリンギングが支配的であり、2つの理由から昇圧コンバーターにダメージを与えやすい。第1に、ローサイドリンギングは、昇圧スイッチノード(SW2)を負電位(GND以下)に振らす。ほとんどの集積化コントローラでは、このノードの負電位は限られたレベル以内に制限されている。このピンの定格を超えるスイッチノードリンギングは信頼性問題を引き起こす。第2に、ローサイドリンギングは、フローティングドライバ(図4のBOOT2−SW2ノード)の電源レイルにゲートドライバデバイスの定格電圧を超えるスパイクを加える。

 ハイサイドのスパイク(図3の降圧コンバーターの例で示した)とは異なり、負のスイッチノードリンギング問題は、高電圧定格のFETやコントローラを選択するというように簡単に回避する訳にはいかない。高電圧定格ICのドライバ回路がより高いマージンを持つ、あるいは、より高い負のスイッチノード定格をもつとは限らないからだ。

 降圧スイッチノードリンギングへの対策技術の幾つかは昇圧ノードリンギングに適用可能だが、適用できないものもある。

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