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A-D変換器を使って温度補償をした重量計Design Ideas 計測とテスト(2/2 ページ)

» 2016年06月23日 11時00分 公開
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フィールドでの校正は不要

 A-D変換器の基準電圧は、電源電圧以下であれば問題ない。ブリッジトランスデューサーの励起電源を基準電圧として入力することもできる。しかし抵抗分割を利用すれば、入力ダイナミックレンジの全範囲を使用可能である。

 図1では20kΩと12kΩの抵抗を使った。励起電源が5Vならば、A-D変換器に1.875Vの基準電圧を入力していることになる。主チャンネルの利得(プログラム可能)は128である。こうしてA-D変換器の入力範囲のフルスケールと、トランスデューサーの出力範囲のフルスケールを合わせた。図の下部にあるスイッチは、待機モード時にトランスデューサーへの電源供給を止める役割を果たす。

 AD7719は、製造時に校正を済ませている。さらに信号線には利得やオフセットのドリフトを低減させるためにチョッピングを施しているためフィールドでの校正は不要である。重量計の精度を高めるには、商用交流電源の周波数である50Hzもしくは60Hzの影響を取り除く必要がある。

 AD7719では、この成分を除去するために、出力データの転送速度を19.8Hzにプログラムした。そのときの利得は128で、分解能は13ビットである。分解能を高めるには、更新頻度を下げて、コントローラーにデジタルフィルターを追加すればよい。副チャンネルでは、サーミスターを使ってブリッジ温度をモニターしている。LSIに集積した電流源でサーミスターを励起する。さらにこの電流源は、基準電圧の発生源として使用できる。

 この回路は4線のフォース/センサー構成を採用することで、配線抵抗の影響を低減している。駆動する配線の抵抗は、コモンモード電圧をシフトさせるが、回路の性能を低下させることはない。さらにセンサーを接続する配線抵抗の大きさについては、アナログ入力端子のインピーダンスが高いため問題にならない。

 基準電圧を設定する抵抗(RREF)には、温度係数が低いものを選ぶべきである。動作温度範囲は、使用するサーミスターで決まる。BetaTHERMの「1K7A1」を使い、サーミスター励起電流を200μAに設定すると、動作温度範囲は−26〜70℃になる。

Design Ideas〜回路設計アイデア集

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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。

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