電子部品について深く知ることで、より正しく電子部品を使用し、「分かって使う」を目指す本連載。フェライト編第2回となる今回は、「磁化の様子と磁性体の飽和」を考えていきます。
前回は量子論的な内容もありましたがご理解いただけたでしょうか? 量子論的な話はさておいて、
の3つを覚えておいてください。
また、「酸化鉄粉を加圧成形し、焼結」を検索すると粉末冶金(ふんまつやきん)に交じってフェライトの話題が見つかることがあります。
今回は単位分子胞からもう少し巨視的に、磁化の様子と磁性体の飽和を考えていきます。
ここでは前回に続いてフェライト内部の振る舞いについて見ていきます。
既に説明しましたように消磁された状態のフェライトは図1に示すように磁壁で区切られた、小さな磁区が多数集まった構造をしています。この場合、磁気モーメントの方向がランダムなため、総和が“0”となって外部から見た場合の磁性は発現していません。
磁区の大きさ、形状はいろいろな因子によって決定されますが、それらを決めるのは磁性体全体のエネルギーが最小になる安定化条件です。この磁区の振る舞いについて
表1の2つのケースを考えます。
この2つの事例から分かるように、
状態1⇒放置していても何も変化がない、つまり仕事はできません(=エネルギーを持っていません)。
状態2⇒放置していると互いに反発して位置を変えることができます(=エネルギーを持っています)。
逆に言えば外部から磁性体に磁界(=磁気エネルギー)を加えた場合、図2、図3に示すように内部の磁区がN-Sの引合い状態からN-Nがそろう状態に磁区が反転することでエネルギーを吸収(蓄積)することができます(図3①→④)。
しかし、磁性体の全磁区が全て同一の向きになったとしたら次の状態はどうなるでしょうか?
次に向きがそろう磁区がないわけですから、これ以上エネルギーの吸収ができません。この状態が図3の④に示す磁性体の飽和です。
実際には、個々の結晶粒が持つ磁化容易軸にそろった後、⑤で磁界方向φに磁区が回転し完全飽和状態に至ります。
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