2台目も同じシリーズの電源でこの修理事例を紹介する。1台目と同様に制御IC(M51995AP)の電源波形を図5に示す。
図5でリップル電圧は15Vと大きいが図4の波形とだいぶん波形が違っていた。しかし、図5もFETのゲートを駆動したときに7V程度まで電圧が下がっていて、電解コンデンサーの電流供給能力が落ちていた。電源電圧の波形が短時間高くなっているのはスイッチングの直後に二次側からの電流が供給されているからだ。この電源の修理ポイントになる部分の写真を図6に示す。
図6のC31とC33がポイントの電解コンデンサーであるが、C31を外して測定したら容量が約10μFだった。ESRも測定した。その写真を図7に示す。
図7で測定した電解コンデンサーの表示は10μFで測定値は9.8μFとほぼ正常だった。しかしESRは案の上、高く、11Ωだ。11Ωでは、FETへ十分なゲート電流が供給できないことが分かる。代替にESRが0.7Ωの電解コンデンサーへ交換し、同じ電源の電圧波形を確認した。図8に示す。
図8でリップルはほとんどなくスイッチング時の電圧低下はない。この電源波形であれば、恐らく大丈夫だろう。2台目の電源も自信を持って「修理完了」といえる。
これまでの説明で電源修理のコツは理解されたと思う。まとめると、制御IC近くで風通しの悪い位置にある小さな電解コンデンサーを見つける。その電解コンデンサーの波形を確認して波形が安定していないことを確認すればよい。これが不具合の原因であり、この電解コンデンサーを交換すれば、全ての電解コンデンサーを交換するよりも安価で確実な電源修理が可能だ。小さな電解コンデンサーの価格はせいぜい20円程度。この安いコンデンサーを1〜2個交換さえすれば、動かなくなった10万円の電源をも、よみがえらせられる
また、修理の際は、念のために、入力と出力の電解コンデンサーの容量は確認しておいた方がよい。電源の修理にはLCRの測定器は欠かせないが、特にESRが測定できるものが望ましい。図7で紹介した測定器は中国のサイトから1000円程度で購入したものだ。この測定器のおかげで、部品の不具合点がはっきり分かり、安心して修理の仕事ができるようになった。
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