図2右上に一次電源の電解コンデンサーの合計容量を基板にメモした。1000μFが2個実装してあるが、実測値は2200μFでほとんど容量抜けはなかった。二次側もほとんど容量抜けはなかった。
図2の基板左上が黒くなっている。これは電源制御ICに一次電源から起動電流を供給する抵抗が発熱したために起こっている。この基板では表面実装の抵抗を直列に接続して起動電流が供給されていた。このため抵抗が発熱し、基板が加熱され変色していた。特に力率制御(PFC)電源では一次電源から生成されたDC380Vの電圧からDC20Vの制御IC電源に落とすために抵抗の発熱が大きい。しかし、図2程度の変色具合では、基板はまだ正常に動作できる。図1の左側を拡大して図3に示す。
図3の左右に放熱板がある。発熱部品を探していく。
右上に整流用のダイオードブリッジ、右中央に二次側の整流ダイオード、左側にトランスを駆動するFETがある。これが主な発熱部品だ。
次に空気の流れを見ていこう。図3の中央部は3個のトランスや電解コンデンサーに囲まれ、空気が移動しにくく、温度が上がりやすく見える。図3の中央のICの周辺の基板が茶色に変色しておりこの部分の温度が高くなっていることが簡単に伺える。なお、左下の大きな電解コンデンサーは外からの空気に触れやすい場所にあるといえる。容量を確認すると、ほとんど容量抜けはなかった。
電源を修理するポイントの部品が図3の中に隠れている。読者は既に分かったと思う。図3の中央に2つのICがある。「FA5331P」と「M51995AP」の2つだ。このICのデータシートを検索して確認し、ぜひ、このICの機能を理解してほしい。FA5331PはPFCを行うためFETのゲートを制御し、一次電源をチョークコイルで昇圧させDC380Vの電源を生成している。M51995APはトランスを駆動するFETのゲートを制御し、DC380Vから二次電源のDC5VとDC24Vを生成している。
さて、図3でのポイントの部品はICの間の赤枠で囲った2つの小型の電解コンデンサーだ。下側はM51995APのパスコンでこの電解コンデンサーの電圧波形をオシロスコープで確認した。この電解コンデンサーは50V10μFの小さなコンデンサーで、目的はICの動作電源を安定化させることにあり、これがふらつくとICが正常に動作できなくなり、FETのゲート電流の供給能力が低下し、安定した電源制御ができなくなってしまう。不具合例の波形を図4に示す。
図4で電源電圧に大きなリップルがあることが分かる。この波形から電解コンデンサーが電源を安定させる機能を果たしていないことが分かるだろう。この電解コンデンサーを交換したら、電源の出力が安定し正常に動作できた。
図4の波形の大きなリップル波形は何を意味するのだろう。これが最も重要な点だ。制御電源は約17Vだが、ワーストケースでは5V程度まで下がっている。リップル波形の周期は30kHz程度であり、トランスをスイッチングする周波数に近い。この大きなリップルからFETをスイッチングさせる時のゲート駆動電流が確保されていないことが分かった。電解コンデンサーを外して単品で測定してみると、電解コンデンサーの容量は10%程度しか低下していなかったが、ESR(等価直列抵抗)が2.9Ωと大きく、FETのゲート電流を供給する能力が低下していた。小さなコンデンサーを交換して1台目の電源の修理は完了だ。
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