今回は「二次物理解析」であるPVCチェッカーと断面図解析(クロスセクション)を解説していく。また、主にマイコン製品の開発現場で用いられる不良解析手法であるEBテスター、FIBも参考情報として紹介する。
前回に続いて、マイコンメーカーが作成する「不良解析レポート」を理解するために必要な基礎知識を解説していく。
今回は「二次物理解析」として、PVCチェッカーと断面図解析(クロスセクション)を解説し、その他の不良解析手法としてEBテスター、FIBも簡単に解説する。
マイコン講座 不良解析編 第2回の「光学顕微鏡およびSEMによる観察」の章で述べたように、電子ビームを試料に照射すると、電子は二次電子、反射電子となって放出されたり、透過電子として通り抜けたりする。しかし、一部は、試料表面に残り、帯電した状態になる。この帯電した電子の有無を電位コントラストとして可視化し、観察することで、不良箇所を特定する手法がPVCチェッカー(電位コントラスト法)である。
帯電は、絶縁体(非導電性)の試料上で起こる。しかし、絶縁が破壊されている不良の場合、照射された電子は絶縁が破壊された経路を通って、試料に吸収されるので帯電しない。そのため、正常な部分と不良(絶縁破壊)の部分における電子の有無で電位が異なり、電位コントラストとして現れる。このように電子が帯電しない部分を見つけ出すことで、絶縁破壊の不良箇所を検出できる。
図1にPVCチェッカーの例として、ゲート酸化膜破壊を検出する手順を示す。電子ビームを照射する装置としてはSEMを用いる。
まず、マイコン表面のメタル層を、ビア(Via)層(コンタクトと呼ぶ場合もある)が露出する状態まで剥がす。そして、電子を照射する。ゲート酸化膜は絶縁体であるので、正常であれば帯電状態になるが、破壊している場合、電子が基板へ抜けて、電子の穴が発生する。一方、拡散層はもともと電子が基板に抜ける経路になっているので、同じように電子の穴が空いたように見える。
電位コントラストをチェックした結果とレイアウト設計図のパターンと比較すると、ゲート酸化膜上で電位コントラストが異なることが検出されるので、ゲート酸化膜が破壊されたMOSの位置が判明する。
絶縁層のリークや、ゲート酸化膜が破壊しているMOSトランジスタの特定。
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