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プッシュプルコンバーターで電力安定化するにはDC-DCコンバーター活用講座(6) 電力安定化(6)(2/3 ページ)

» 2017年09月21日 11時00分 公開

ハーフブリッジおよびフルブリッジコンバーター

 プッシュプルコンバーターに似たトポロジーとして、ハーフブリッジコンバーターとフルブリッジコンバーターがあります。これらは2個または4個のスイッチを使ってトランスの1次巻線に電流を流すので、プッシュプルコンバーターのように1次側のセンタータップ接続を行う必要はありません(ただし、2次側ではセンタータップを使用します)。

図2:ハーフブリッジコンバーターとフルブリッジコンバーター 出典:RECOM(クリックで拡大)

 ハーフブリッジトポロジーでは2個のコンデンサーC1およびC2を使ってレールスプリッタを構成するので、1次巻線の一方の端はVIN/2に固定します。次いで、2個のスイッチS1およびS2により、1次巻線のもう一方の端をVIN+またはGNDに交互に接続します。1次巻線の両端の電圧は|VIN/2|を超えないので、伝送レートはプッシュプルコンバーターの半分になります。

 ハーフブリッジトポロジーがプッシュプルトポロジーよりも優れている点は、要求されるスイッチの耐圧が2×VINではなくVINであることと、1次側の巻線が1本だけなので磁束変位の問題がないことです。一般に、ハーフブリッジトポロジーはプッシュプルトポロジーよりも全体的な効率が高いので、より大電力のアプリケーションに有用です。

 また、トランスの構造が簡単なので、平面トランスに最適です。短所は、C1およびC2内のリップル電流が大きいため、コンデンサーが過熱しないように慎重に選択する必要があることです。また、シュートスルー(S1とS2の両方が同時にオン)を回避するために、デューティサイクルは通常45%に制限されます。さらに、S2用のハイサイドドライバーが必要なので、部品コストが上がります。

 ハーフブリッジの短所はフルブリッジトポロジーを使えば解消できます。フルブリッジトポロジーは4個のスイッチを使用します。これらのスイッチはS3+S1:オン、S2+S4:オフ、次いでS2+S4:オン、S3+S1:オフの順にアクティブになり、1次側が常に各スイッチングサイクルの全入力電圧を監視するようになっています。

 フルブリッジトポロジーはハーフブリッジの長所を全て備えていますが、短所は1つもありません。しかし、タイミング回路が複雑になり、2個のハイサイドドライバーが必要になります。そのため、フルブリッジ設計は一般に、追加部品のコストがあまり重視されない大電力アプリケーションに使用されます。フルブリッジの伝達関数はプッシュプルコンバーターと同じです。

バスコンバーターまたはレシオメトリックコンバーター

 バスコンバーター(別名、レシオメトリックコンバーター)は絶縁型DC-DCコンバーターのなかで特別な位置を占めています。このようなコンバーターは、多くの異なる電源電圧をもつ複雑な電気通信用電源システムにおいて必要とされています。電源レールごとに個別の電源を構築するかわりに、中間バスアーキテクチャ(IBA)または分配電源アーキテクチャ(DBA)の構想が考案されました。このアーキテクチャでは、1次側電源がまず中間の絶縁型DC電源に変換され、次にこの電源を使って他の非絶縁型のボードレベルのポイントオブロード(POL)DC-DCコンバーターに給電します。

 バスコンバーターは変換比が固定(通常4:1)であるため、レシオメトリックコンバーターとも呼ばれます。これは、出力電圧が入力電圧に比例して変化することを意味しますが、後に続くPOL降圧コンバーターの入力電圧範囲が広いため、このことは重要ではありません。それよりむしろ、このコンバーターは最大変換効率に最適化されており、非常に大きな負荷電流で97%以上の効率を達成することが重要になっています。

 バスコンバーターはフォワードまたはプッシュプルトポロジーで構成可能で、ハーフブリッジまたはフルブリッジスイッチングを使用しますが、最大効率が得られるように調整された固定デューティサイクルを使用します。また、損失をさらに低減するために、出力ダイオードの代わりに同期整流を使用する場合がよくあります。

 実際には、2つの中間バス電圧がよく使用されます。まず、コンセントからのAC入力が、無停電電源を供給するためにバッテリーによってバックアップされる48Vdcに変換されます。次いで、48Vは4:1の比で降圧され、5Vと3.3Vのボードレベル電源を供給するPOLコンバーターに12Vのローカルバスを提供します(図3)。

図3:IBAの簡略図 出典:RECOM(クリックで拡大)

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