LVDSの特長の1つは差動信号を使用し信号を伝送していることが挙げられます。そのため伝送路の設計では、基板伝送路やコネクター、ケーブルを介して差動信号の品質をなるべく落とさず受信デバイスまで伝達できるよう設計を行います。LVDSは0Hzから3Gbps程度までをサポートするI/Fです。デジタル信号は数百Mbpsから数Gbpsの帯域では伝送路の減衰特性、各部位のインピーダンスの暴れなどで、アナログ的な挙動となります。伝送路の設計では減衰や各部位のインピーダンス特性の管理が重要となるため、以下に基本的なLVDS伝送路の設計方法について説明をしていきます(より高速な差動伝送路の設計はCMLの応用編で説明していく予定です)。
使用するプリント配線板(PCB)は最低4層以上を使用します。図15のように1層目はLVDSデバイスの実装と差動LVDS配線、2層目はリファレンスのGND、3層目は電源、4層目はシングルエンド信号に割り当て、シングルエンド信号ラインからのクロストークノイズを防ぎます。
6層以上で差動ラインを内層にレイアウトする場合でも同様に、差動ラインがシングルエンド信号ラインと結合してクロストークノイズを拾わないように、GNDや電源層を挟んで違う層へレイアウトし、分離します。
差動に限らず高速信号のマイクロストリップラインでは下層GNDと電磁気的に結合することで特性インピーダンスを有しています。そのため、高周波を扱う設計ではGND層と電源層は専用のべた層を割り当て、伝送路の特性インピーダンスが常に均一になるようにします。多層の場合はGND層と電源層の間隔を狭くすると低容量のバイパスコンデンサーと同様に高周波領域で優れた低インピーダンスの電源となります。
同層にLVDSとエッジレートの速いシングルエンド信号が混在する場合は、図16のようにLVDSの小振幅差動信号にシングルエンド信号からのクロストークノイズの重畳を避けるため、距離を離して配線します。内層への同層配線時も同様です。
以下に基本的なPCBレイアウトの順序を記載します。
差動ラインは図17(下)のように表層に配線するマイクロストリップもしくは内層のストリップラインで配線を行います。これらをエッジ結合の差動配線と呼んでいます。図18の縦方向の差動配線(ブロードサイド結合)も可能ですが、層厚sはエッジ結合の配線のように細かく調整できないためエッジ結合のストリップやマイクロストリップラインよりも特性インピーダンスの調整が難しくなります。
GND層に挟まれた内層配線の差動ストリップライン構造は上下GND層によりシールドされるため、ノイズ放射の低減とノイズ耐性が大きく向上します。しかし上下のGND層との結合により、同じ配線幅(w)のマイクロストリップラインと比較し特性インピーダンスが低くなるので、注意しましょう。またストリップラインでは、デバイスとの信号接続は層間移動を行うためにビアを介した構造になり、ビア配線のスタブ(枝分かれした余分な伝送路)により高周波帯域に悪い影響を与えるため、ビアスタブがなるべく短くなる層を選択し配線します(ビルドアップやバックドリルなどでビアスタブがない構造の場合は問題ありません)。
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