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DC-DCコンバーターの熱パラメーター理解DC-DCコンバーター活用講座(19) データシートの理解(5)(3/4 ページ)

» 2018年06月25日 11時00分 公開

温度ディレーティング

 あらゆるDC-DCコンバーターは内部で電力を熱として消費するため、周囲より温度が高くなります。この余分な熱を遠くに運ぶことができている限り、コンバーターはフルパワーで動作することができます。しかし、周囲温度が高くなるにつれて、この過剰な熱を取り除くのはますます難しくなります。ある周囲温度になるとコンバーターの温度は上限に達します。周囲温度がそれ以上少しでも高くなったら、負荷を減らして内部消費電力を減らすことでその分を埋め合わせしなければなりません。これを温度ディレーティングとよびます。

 図3にディレーティング曲線の例を示します。前出の例と同じく、本例もまたRP15-4805SAコンバーターを使っています。周囲温度が−40℃から+68℃の範囲では、コンバーターはフルパワーで使用できます。最大周囲温度が85℃まで必要な仕様のアプリケーションであれば、コンバーターの負荷を55%に減らし、−40℃から+85℃の範囲で動作できるようにする必要があります。

図3:ディレーティング曲線の例(RP15シリーズDC-DCコンバーター)

 実際には、ティレーティング可能な限度というものがあります。ディレーティング曲線は、負荷が減少しても効率は変わらないということを前提にしていますが、負荷が非常に小さい場合、これは当てはまりません。実際、負荷を40%より小さくディレーティングすることは逆効果です。負荷を小さくしたことで消費電力が減っても、その分だけ効率が下がって消費電力が大きくなるので意味がありません。図4は、低負荷では消費電力曲線は横ばいになるだけでなく、再上昇し始めることがあることを示しています。

図4:内部消費電力、負荷、VIN

 コンバーターにヒートシンクを取り付けると周囲への熱伝導が向上し(θCAが下がる)、最大動作範囲が広がります。しかし、ヒートシンクはその名に反して熱を吸収しません。ヒートシンクに伝わった熱は、やはり最終的には周囲に逃がす必要があります。従って、その機能はコンバーターの実質的な表面積を増やすことにあります。本例で使用しているRP15-4805SAは、ケースサイズが1”×1”の非常にコンパクトなコンバーターです。そのため、コンバーターに合うサイズのヒートシンクも非常に小さいので、表面積も大幅に増えることはありません。一般的に、クリップ式ヒートシンクではわずか5〜10℃しか動作温度範囲は広がりません。さらに低減するには、強制対流などの他の方法で冷却する必要があります。

図5:小型クリップ式ヒートシンクを使った場合のディレーティング曲線

 さらに、ヒートシンクは、金属製ケースに入っているかベースプレートに搭載されているコンバーターにしか使えません。事実、プラスチック製ケースに入っているコンバーターにヒートシンクを取り付けることは逆効果です。ヒートシンクのプラスチックへの熱接続がよくないために、空気の対流を妨害してしまうためです。

 結論をいうと、ディレーティングは動作範囲の上限を10〜15℃広げるのに役立ちますが、多くのアプリケーションにおいてそれがほぼ限界です。ヒートシンクも役に立ちますが、もしヒートシンクもコンバーターと同じような大きさであれば、これもまた動作範囲の上限を5〜15℃広げることしか期待できません。

 最大温度範囲を大幅に広げるためには強制冷却が必要です。

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